【2023年版】日本国内の半導体工場投資案件まとめ

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半導体の重要性について認識が進み、国の支援も含めて2023年も日本国内への半導体工場投資が活発な状況です。

この記事では、2023年に発表された代表的な国内半導体工場投資案件についてまとめましたので、ご紹介します。是非とも最後までご覧ください。

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ずーぼ  
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目次

動画で説明:2023年版国内の半導体工場投資案件まとめ

2023年国内半導体工場投資案件まとめ

新規国内半導体工場投資まとめ

2023年に開始した、または決定した主要な半導体工場投資案件は上記の5件です。

半導体の種別ではロジックが2件、イメージセンサが1件、パワー半導体が2件という内訳です。パワー半導体は、ロームと三菱電機がともにSiCパワー半導体の工場を既存建屋の取得、または新設する形で、今後特にEV用に向けた供給が進むものと考えられます。

継続国内半導体工場投資まとめ

こちらは2022年以前から継続している半導体工場投資の案件です。5件ありますが、どれもが2024年に生産開始予定となっています。

JASM(TSMC熊本工場)以外は、パワー半導体用の案件がメインとなっています。パワー半導体は日本企業が存在感を発揮できている分野であり、今後の需要増加が見込まれている分野でもあります。各工場の稼働と国内企業のシェア拡大に期待したいものです。

工場立地

工場の立地を見ますと、北は東北地方から南は九州地方まで国内に幅広く点在しています。

新規の案件である①から⑤では、北海道と東北が各1件、そして九州地方が3件となっています。継続案件と合わせても九州地方では特に活発な投資が行われていることがよく分かります。

それでは個別の内容をみていきましょう。

国内半導体工場投資案件まとめ個別内容

ラピダス

国が支援し、次世代半導体の国内生産を目指すラピダスの工場は、北海道千歳市に建設されます。

GAA(Gate All Around)と呼ばれるトランジスタ構造で、2nmプロセスを使って最先端のロジック半導体が生産される予定です。

2025年4月にパイロットラインを稼働させ、2027年に量産開始するという計画です。

2023年9月には起工式が行われて、現在急ピッチでの工場建設が進んでいます。ラピダスでは工場(Fab)のことをIIM(イーム)と呼ぶそうです。これはInnovative Integration for Manufacturingの略称とのことです。

ソニー

ソニーは新工場建設用に熊本県合志市に土地を取得しました。

既存の熊本TECからすぐ近くの場所です。新工場の着工については市場環境の変化を見ながら慎重に判断するとのことですが、2024年から26年の3年間には9,000億円前後の投資が行われる見込みで、その中から新工場建設の投資も行われる可能性があります。

JSMC(PSMC・SBI連合)

SBIホールディングスと台湾PSMCが出資して設立されたJSMCの新工場は宮城県大衡村に建設されます。

生産される予定の製品はロジック半導体で、55/40/28nmプロセスの予定です。

工場建設は2段階に分けられて計画されており、Phase1では2027年までに12インチ(300mm)で月産1万枚の生産量を予定しています。さらにPhase2では2029年までに月産4万枚になる見込みです。

ローム

ロームの新工場は、宮崎県国富町にある既存工場の建屋を取得して設けられます。

ソーラーフロンティア社が持っていた旧国富工場建屋を同社から取得して、これを利用することで早期立ち上げを行います。そのため早ければ2024年末の稼働を目指すとしています。

新工場ではSiCパワー半導体とSiCウエハを生産する予定です。またこの投資は東芝と共同で申請していた経済産業省の助成も決定しています。

三菱電機

三菱電機の新工場は熊本県菊池市に建設されます。

生産される製品はSiCパワー半導体で、2026年4月の稼働予定です。投資金額は既存工場の生産能力向上と合わせて約1,000億円となっています。

新工場では現在SiCウエハの主流である6インチ(150mm)ではなく、大口径化に対応して8インチ(200mm)に対応した工場になるということです。

JASM(TSMC)

JASMはTSMCの子会社でTSMCが熊本に建設中の新工場の運営会社です。

工場建設の進捗は周辺地域の土地価格の高騰など、さまざまなニュースで取り上げられています。

工場建設は予定通りに進んでいる様子で、完成予想図に近い形まで見えてきています。2024年2月に開所式が予定されているようで、2024年にはいよいよ本格的に稼働が開始される見込みです。

当初の計画である2024年末の初回出荷に向けて、工場内部では急ピッチの立上げが進んでいると考えられます。

富士電機

富士電機はパワー半導体を手掛けており、8インチ(200mm)のSiパワー半導体の生産能力の向上と、SiCパワー半導体についても投資を進めています。

SiCパワー半導体については、富士電機津軽セミコンダクタ(青森県五所川原市)で投資を進めて2024年から量産を開始する予定です。

三菱電機

こちらは三菱電機の広島にあるパワーデバイス製作所(広島県福山市)の案件です。

2021年にシャープから取得した工場で、Siパワー半導体の8インチ(200mm)ラインを2022年から稼働しています。 2021年から2025年の間に1300億円を投じていく計画で、12インチ(300mm)ラインも構築中です。

2023年8月末に生産設備が完了したと発表しており、2024年から量産開始させる計画となっています。

ルネサスエレクトロニクス

ルネサスエレクトロニクスの甲府工場(山梨県甲斐市)は旧日立系の工場で、6インチ、8インチラインを持っていましたが、2014年に閉鎖された工場です。

しかしここに900億円を投じて12インチ(300mm)ウエハ対応のSiパワー半導体生産ラインとして2024年に稼働を再開させることが2022年に発表されました。

一度閉鎖した工場に投資をして再稼働させるのは非常に珍しい事例です。

進捗は分かりませんが、当初の予定通りに進んでいるのであれば、2024年から稼働が再開される予定となっています。ここ最近業績のよいルネサスエレクトロニクスでパワー半導体の生産能力が大きく向上する見込みです。

東芝

東芝にとって2023年はさまざまなできごとがありました。

3月に日本産業パートナーズらによるTOB(株式公開買い付け)を受けることを表明し、9月にTOBが成立しました。そして12月には1949年に上場して以来、初めての上場廃止となりました。今後の動向は定かではありませんが、東芝に残された強みのひとつであるパワー半導体への投資は継続して進んでいます。

子会社である加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)で、2023年4月にSiパワー半導体の12インチ(300mm)ラインを設ける新製造棟の起工式が行われました。

工場の建設は2期に分けられて進む模様ですが、第1期分は2024年度内に稼働開始予定となっています。

さらにロームと共同で申請していた経済産業省の助成も決定しています。投資額に対して最大で1/3が助成される見込みです。

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