どんな分野であれ、何かを学ぶときに有効な方法のひとつは読書です。
半導体について体系的に学びたいときも同じです。
とは言え、一口に半導体と言っても物性やデバイス、プロセス、ビジネス関連と内容は多岐にわたります。
この記事では、半導体のさまざまな分野毎におすすめできる本を紹介します。
ぜひとも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体に興味関心がある
- 半導体を勉強したい学生さんや社会人
動画で解説:半導体を勉強するためのおすすめ本
半導体全般を学ぶための入門書
まずはじめにご紹介するのは、これから半導体を学びたい、半導体ってそもそも何?という方におすすめする半導体全般の入門書です。全体像をざっくりと学べます。
半導体工場のすべて
長年NECで半導体関連業務を行い主席技師長まで勤められた菊池正典氏が書かれている本書は、半導体プロセスがメインの内容となっています。
半導体プロセスに加えて、半導体工場や半導体製造装置、半導体製造についての豆知識など広く学べる一冊です。
半導体関連企業に就職、転職を考えている方、現在勤めている方にとって必読の本です。
「半導体」のことが一冊でまるごとわかる
半導体とは、というところからはじまり、歴史や各素子についての全体像が学べる一冊。
ざっくりと書かれ過ぎている部分はありますが、まずは全体像を知りたいという方にはおすすめです。
半導体業界やビジネスについて学べる本
次は半導体業界やビジネスについて学べる本です。最近注目度が上がっている理由がわかります。
半導体産業のすべて
半導体工場のすべての著者である菊池正典氏の新刊。半導体関連企業が全部で237社も網羅されており、ビジネスや投資のために知っておきたい内容が盛りだくさんです。
半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書
半導体業界について主に半導体製造装置メーカーを軸にしてまとめられた一冊です。
個別企業についても取り上げられていますので、半導体製造装置メーカーに就職や転職を考えられている方にはおすすめです。
2030 半導体の地政学
現代では半導体が戦略物質となりつつあります。そんな半導体を各国がいかにして主導権を得ようとしているのかがわかる一冊です。
技術的な細かな内容はあまり出てきませんので、どなたにでもおすすめできる本です。
半導体の歴史を学べる本・DVD
半導体の歴史にはさまざまなドラマがあります。
プロセスやデバイスの詳細がわからなくても先人たちの努力やひらめきには学ぶべき点が多いです。
半導体戦争
今や経済安全保障上、重要な戦略物質となった半導体について黎明期から現代までの世界各国の攻防がよく分かります。フィナンシャルタイムズの2022年ビジネスブックオブザイヤーの「CHIP WAR」翻訳版です。
NHKスペシャル 電子立国日本の自叙伝
NHKスペシャルで放送された「電子立国日本の自叙伝」のDVDです。
放送は30年以上前の番組ですが、半導体の基礎から日本が電子立国と言われるようになった発展の歴史がよくわかります。
2022年現在では中古品しかないようですが、一見の価値は大いにあります。
個人的には入社直後に見つけて買い、その後も何度も見返しました。
日本半導体 復権への道
半導体一筋の人生を送ってきた元日立専務の牧本次生氏の著書です。
半導体産業の過去、現在、そして未来へ向けた提言があります。楽しく読め、大変勉強になります。
日本半導体産業 激動の21年史
電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)を発刊している産業タイムズ社が2000年以降の記事等をまとめた産業史の上下巻です。
2000年以降の日本の半導体関連企業は苦しい時代でしたが、その様子や現在に至る変遷がよくわかります。
2000年以前の半導体産業の歴史については同様に「日本半導体50年史」がありますが、2022年現在は絶版になっており、私はメルカリで探して入手できました。
こちらも日本の半導体の歴史を知る上では貴重な書籍ですので入手の機会があればおすすめします。
半導体プロセスを学べる本
半導体のつくり方である半導体プロセスは奥が深いです。
個々の企業でのノウハウも多数あるはずですが、一般的な内容は書籍からでも充分学べます。
はじめての半導体プロセス
半導体プロセスを学ぶ上では大いに役立つ本です。
内容としては少々古いですが、基本的な考え方は変わりません。
半導体関連の研修室に配属された大学生や、半導体関連企業に就職、転職された方は一読の価値があります。
はじめての半導体リソグラフィ技術
フォトリソグラフィ工程に特化した参考書です。
半導体プロセス全体像を理解した上でもう少し踏み込んで学びたい方におすすめです。
はじめての半導体ドライエッチング技術
ドライエッチング工程に特化した参考書です。
半導体プロセス全体像を理解した上でもう少し踏み込んで学びたい方におすすめです。
はじめての半導体後工程プロセス
タイトルの通り後工程の入門書ですが、半導体産業やビジネスの側面についても書かれております。
前工程を学んだあとに読むことをおすすめします。
半導体物性・デバイスを学べる本
半導体デバイスを本格的に学ぶためには物性論や量子力学の知識が欠かせません。
難しい内容になりますが、その中でもわかりやすかった本をピックアップしました。
高校数学でわかる半導体の原理
半導体物性の基礎をタイトルの通り高校数学までの知識で説明してくれる良書です。
たいへんわかりやすく書かれていますので、本格的に半導体を学びたい方や高校生、大学生にもおすすめです。
工学系のための量子力学
タイトルの通り、デバイス動作の理解のための量子力学の教科書です。
個人的に学生時代にずいぶんと読み込みました。工学部の大学生におすすめします。
例題で学ぶ半導体デバイス入門
大学で半導体を学ぶ学生さんにおすすめの本です。
各大学で使用される教科書には演習問題が少なかったり、付いていても解説が少なく充分に理解できない場合があります。
本書であれば、例題や演習の解説が詳しく書かれており理解が進みます。
半導体デバイスの基礎
インテルの元会長アンドリュー・グローブ氏の著書です。
基礎というタイトルとは異なり、かなり踏み込んだ内容が書かれていますので初学者にはおすすめできません。
半導体物性、デバイスについて一通り学んだ方がレベルアップのために読むことをおすすめします。
半導体技術者検定テキスト
半導体業界で仕事をする際に必要な資格は特にありません。
(工場における必置資格を除く)
ただ半導体技術者検定という資格があり、半導体に関することを学ぶことを目的としてこの資格を利用することは有用だと考えています。
半導体技術者検定には公式テキストが出版されていますので、資格試験を受けるか受けないかに係わらず公式テキストを一読することには価値があります。