2025年5月に半導体業界で生じたニュースを9本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2025年5月号
動画で説明:半導体関連企業の2024年度決算
半導体メーカー編
半導体製造装置メーカー編
半導体材料メーカー編
2025年5月末時点の半導体関連株式市場推移

各ニュース記事:半導体業界ニュース2025年5月号
NTT、AI活用で半導体薄膜の材料分析の自動化に成功

NTT(日本電信電話)は5/2、光通信用デバイスに使用する半導体薄膜の成膜条件である原料ガス流量を半導体物性の知識を取り入れた機械学習によって自動化する手法を実現したと発表しました。
同社ではこれまでにベイズ最適化と呼ばれる手法を用いて世界初となる超高品質な酸化物薄膜の作製に成功しています。今回はその技術に半導体物性の知識を組み合わせたPI-BO(Physics-informed Bayesian optimization)によって、光通信や光電融合デバイスを作るために必要な化合物半導体の薄膜作製を効率的に行うことに成功したということです。
PI-BOの特徴として、少ない実験回数で最適値に到達でき、教師データの範囲外の予測にも適しているという点があります。
これによって、従来は経験に頼っていた成膜条件の効率的な探索技術を次世代に継承するという観点で、ものづくりの現場の課題を解決するものであり大きな意義を持つとしています。
光電融合と呼ばれる技術開発がどんどんと進んでいます。そうした中でデバイス作製に必要な化合物半導体薄膜の成膜に最適な条件出しを早くできるということは大いに意義があると思います。技術の普及と他の分野への展開にも期待をしたいです。
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NTT:プレスリリース(5/2)
富士フイルムとタタ・エレクトロニクス、インドでの半導体材料生産で提携

富士フイルムは5/7、タタ・エレクトロニクスとインドでの半導体材料の生産体制およびサプライチェーンの構築に向けた提携に関する基本合意書(MOU)を締結したと発表しました。
現在のインドでは半導体のほぼ全量を輸入に依存しており、インド政府は半導体の国産化に力を入れています。
そうした背景もあり、タタ・エレクトロニクスではインドのグジャラート州ドレラに半導体前工程製造工場を、アッサム州ジャギロードに半導体後工程製造工場を建設中です。
富士フイルムは、前工程から後工程まで幅広い半導体材料を持つ強みを生かしてタタ・エレクトロニクスの半導体製造立上げを支援するということです。
インドはIT産業やスタートアップが急成長し、世界有数の人口を背景に今後もデジタル化が進展するため、半導体需要は飛躍的に拡大する見込みです。現地生産体制の確立は、雇用創出や産業基盤の強化にも寄与してインド経済の持続的成長を後押しすると思われます。富士フイルムにとっても新市場開拓とグローバル展開強化の好機になると考えられます。
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富士フイルム:プレスリリース(5/7)
デンソーとローム、半導体分野の戦略的パートナーシップ構築に合意

デンソーとロームは5/8、2024年9月より検討・協議を進めていた「半導体分野における戦略的パートナーシップ」を構築することに基本合意したと発表しました。
両社はこれまでも車載向け半導体の取引や開発を通じて連携を強化してきました。
今後は、デンソーが持つ自動車分野での高度なシステム構築力と、ロームが民生市場などで培ってきた最先端の半導体技術を融合し、アナログICを中心にクルマの電動化や知能化を支える高品質なデバイスのラインナップ補完や開発面での連携を深めていくとしています。
さらに本パートナーシップをより強固なものとするために、両社の資本関係を強化することも引き続き検討を進める予定ということです。
電動化、自動運転、コネクティッド等の次世代システムに係るアナログICの開発を中心に連携を深めていくとしています。今後、連携による具体的な成果がどういった形で表れてくるかが楽しみですね。
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デンソー:プレスリリース(5/8)
ローム:プレスリリース(5/8)
テクセンドフォトマスク、株式上場準備について公表

テクセンドフォトマスクは5/14、同社の株式上場に向けて準備を進めていると発表しました。
同社は半導体用フォトマスクの製造・販売会社として、凸版印刷(現TOPPANホールディングス)からの会社分割により設立され、2022年4月より営業を開始しています。
今後、株式上場を通じて市場のニーズを捉えた投資を実行し、独立企業体として更なる成長と競争力の強化、企業価値の向上を実現したい、としています。
具体的な上場時期については、関係当局の承認を前提とすること、株式上場の準備過程における検討の結果によっては、上場延期の可能性もあるため現時点では未定となっています。
具体的な上場時期は未定としていますが、上場に向けた準備を進めると発表するということは、ある程度目途が付いているのではと考えられます。今後の動きに注目していきたいです。
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テクセンドフォトマスク:プレスリリース(5/14)
新電元工業、京セラのパワー半導体事業を買収へ

新電元工業は5/14、京セラのパワー半導体事業を25億円で買収すると発表しました。
今回の事業買収では、まず京セラが神奈川県の秦野工場、茨城県のつくば事業所、電子部品国内営業部の一部および台湾製造子会社で運営するシリコンダイオードを中心とするパワー半導体事業を2025年10月に分社化します。そして2026年1月に新電元工業が新設会社の株式を取得することで子会社化するというスキームです。
京セラのパワー半導体事業は2025年3月期の売上高はおよそ73億円です。
新電元工業は京セラの事業計画にシナジー効果を加えて事業規模を拡大し、採算性を向上させていくとしており、パワーデバイス事業の成長への起爆剤とする方針です。
京セラのパワー半導体事業は元々日本インターが手掛けていたもので、それを2016年に吸収合併しています。ただし事業規模としてはそれほど大きくありませんので、今回事業ポートフォリオを再構築するために手放したようです。新電元工業としてはシェア拡大やラインナップ拡充を狙えるということで、今後に期待をしたいです。
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新電元工業:プレスリリース(5/14)
京セラ:プレスリリース(5/14)
グローバルウェーハズ、米国でのウエハ工場投資を増額へ

グローバルウェーハズは5/16、米国内で建設していた300mmウエハ工場が完成し、GlobalWafers America(GWA)が正式に稼働を始めたと発表しました。
同工場はテキサス州シャーマンに位置しており、2022年5月に建設が発表されていました。2022年12月には起工式が行われ、35億ドルを投じて建設が進んでいました。
そして今回、工場稼働を祝う式典が開催され、その中で同社のドリス・スー会長が現在の米国投資をさらに40億ドル拡大し、75億ドルとする意向を発表しました。
グローバルウェーハズの米国工場が完成し、さらに投資を進めることが発表されました。米国内への半導体製造回帰が一部で進む中、主要材料であるシリコンウエハの需要も高まっていき、それに応えていくのだろうと考えられます。
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グローバルウェーハズ:プレスリリース(5/16)
神戸製鋼所、東北大に先端半導体用素材・プロセス技術共創研究所設立

神戸製鋼所は5/23、東北大学と「神戸製鋼所×東北大学 先端半導体用素材・プロセス技術 共創研究所」を2025年6月に設置すると発表しました。
本研究所の主な活動内容は下記の3つです。
- 半導体領域における素材・プロセスの狙い目の抽出
- 共同研究の立案・推進
- 情報発信・人材育成
設置場所は東北大学の青葉山キャンパス内で、設置期間は2025年6月から2028年の5月までの3年間が予定されています。
同社では、半導体市場や技術の変化点を捉え、東北大学の世界トップレベルの半導体関連技術とKOBELCOの保有技術をかけ合わせることで、半導体に関わる新たな素材やプロセス技術の可能性を探索し、共同研究を推進するとしています。
神戸製鋼所は半導体の関連装置や材料を手掛けています。東北大学の産学連携機構である共創研究所の制度を使って共同研究や人材育成を進めていくようです。本制度では過去に住友ベークライトや古河電工なども半導体関連の共創研究所を設けています。
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神戸製鋼所:プレスリリース(5/23)
JX金属、茨城県ひたちなか市の新工場隣接用地を新たに取得

JX金属は5/27、現在建設中の茨城県ひたちなか市のひたちなか新工場(仮称)に隣接するおよそ9.4万㎡の用地を取得すると発表しました。
既存敷地と合わせると合計約31.8万㎡となり、今後のさらなる既存事業の能力増強や新規事業の創出、事業化のためのスペース確保を目的に今回の用地取得に至ったということです。
ひたちなか新工場は2023年1月に起工式を行い、2025年度以降順次稼働開始の計画となっています。同工場では同社の主力製品のひとつであるスパッタリングターゲットなどが製造される予定です。
JX金属では茨城県内の拠点統合などの事業体制強化も進めているということで、用地取得によって工場の能力増強だけではなく拠点集約ということも考えているようです。小さな拠点が点在するよりは大きくまとめてしまった方が効率的ですしね。
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JX金属:プレスリリース(5/27)
三菱電機、パワー半導体の設備投資計画を一部見直しへ

三菱電機は5/28、IR DAY 2025の中でパワー半導体における設備投資計画を一部見直すことを発表しました。
2030年度に向けた成長戦略として、市況変化を踏まえたキャピタルアロケーションを見直すとしています。
具体的にはパワー半導体の設備投資を一部抑制、延伸させます。熊本県に建設中の新工場は計画通りに立ち上げますが、能力増強は延伸させます。その一方で、好調なデータセンター向けの光デバイスの事業拡大のため、こちらに増産投資を行います。
三菱電機のパワー半導体事業投資が見直されるようです。市況を鑑みますと、他の企業も収益力低下に苦しんでおり、仕方がないことと思われます。その一方も光デバイスへ投資を振り分けることができるという点は強いですね。
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三菱電機:IR DAY 2025(5/28)