2025年9月に半導体業界で生じたニュースを9本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2025年9月号
9月末公開予定
2025年9月末時点の半導体関連株式市場推移

各ニュース記事:半導体業界ニュース2025年9月号
文科省、半導体人材育成拠点について7拠点を採択

文部科学省は半導体人材育成拠点形成事業の拠点校となる7つの大学と、その連携校について採択結果を公表しました。
本事業の実施期間は令和7年度から11年度が予定されており、2024年度の補正予算で設備整備費用に10億円が、2025年度予算案で6億円を計上しており、合計で16億円の支援を行う計画です。
採択された拠点校は、事業全体を統括する運営拠点として東京科学大学(旧東京工業大学)が、その他の拠点校として北海道大学や東北大学、名古屋大学、大阪大学、広島大学などとなっています。
拠点校に加えて連携校も各地方の大学や高専(工業高等専門学校)が入っています。各拠点校がそれぞれの域内の連携校とネットワークを生かした教育プログラムなどを展開して、高度人材や基盤人材の持続的な育成に取り組んでいくものです。
JEITA(電子情報技術産業協会)では、今後10年で43,000人の半導体人材が必要としています。さまざまなところで人材育成の取り組みがなされていますが、国としての事業展開もあるようですので、これから各大学などで学ぶ学生は羨ましいですね。勉学と実習などに励んでいただきたいです。
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文部科学省:半導体⼈材育成拠点形成事業採択結果
名古屋大とPhoto electron Soul、検査装置をキオクシア岩手に導入へ

名古屋大学は9/1、同大学発のスタートアップであるPhoto electron Soulと共同開発したGaNフォトカソード技術を用いたウエハ検査装置をキオクシア岩手の現場に導入して歩留まり改善効果を検証すると発表しました。
光照射によって電子を放出する機能をもつ半導体材料で構成された電子源である半導体フォトカソード技術は、産業利用するために脆弱性という課題がありました。
GaN系材料を利用することで既存の20倍以上の高耐久性を実現し、かつナノ秒パルス電子ビームを活用した選択的電子ビーム照射技術が発明され、微細なトランジスタや高アスペクト比構造の検査、計測が可能になったということのようです。
この技術を活用したウエハ検査装置を、3D構造をもつフラッシュメモリを製造するキオクシア岩手の製造工程で歩留り改善に向けた効果検証が2025年9月下旬から開始されるとしています。
大学と大学発のスタートアップが開発した新たな技術を持つ装置が実際の工場で効果検証を開始するということのようです。実際の工程における欠陥検出や原因特定などがどの程度検証されるのかとても気になりますね。期待したいです。
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名古屋大学:プレスリリース(9/1)
レゾナック、次世代半導体パッケージのコンソーシアム「JOINT3」を設立

レゾナックは9/3、日本や米国、シンガポールなどの半導体材料・装置・設計企業27社による共創型評価プラットフォームである「JOINT3」を設立したと発表しました。
近年急拡大する生成AIなど向けの次世代半導体では、複数の半導体チップを配置してインターポーザーと呼ばれる中間基板を介して接続、実装する2.xDパッケージの実装技術が必要不可欠です。
そしてインターポーザーは、半導体の性能向上に伴ってサイズが大型化しており、シリコンを使ったインターポーザーから有機材料によるインターポーザーへの移行が進んでいます。
現在のシリコンインターポーザーでは、ウエハから切り出す手法が主流ですが、サイズの大型化によって取り数が減少するため、四角いパネル形状へ変更し、インターポーザーの取り数を増加させる製造プロセスが注目されています。
JOINT3では、半導体材料や装置、設計分野におけるトップクラスの企業が集結し、515 x 510mmサイズのパネルレベル有機インターポーザー試作ラインを使い、パネルレベル有機インターポーザーに適した材料や装置、設計ツールの開発を推進するとしています。
茨城県結城市にあるレゾナックの下館事業所内に先端パネルレベルインターポーザーセンター(APLIC:Advanced Panel Level Interposer Center)を開設し、ここに試作ラインを構築、2026年から稼働開始予定としています。
レゾナックが同社を含む全27社でコンソーシアムを設立するようです。高度化するパッケージ技術の「練習場」としてJOINT3が機能することで、より確かなデータにもとづき、材料や装置、設計の最適解が検討されることが大きなメリットですね。成果に期待したいです。
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レゾナック・ホールディングス:プレスリリース(9/3)
経産省、マイクロン広島工場の次世代DRAM製造に最大5,000億円助成

経済産業省は9/12、マイクロン広島工場で製造される次世代DRAM生産に対して最大で5,000億円助成することを発表しました。
これはマイクロンの広島工場における設備投資に対する助成で、2029年度までに1兆5,000億円の設備投資が計画されており、最大でその1/3にあたる5,000億円が助成されるということです。
今回の投資計画ではEUVプロセス、装置、材料技術を活用して次世代DRAMの製品化と安定供給を実現するとしており、設備設置は2026年4月から2029年度中というスケジュールとなっています。
マイクロンは米国内でも大規模投資を発表していますが、広島工場でも同様に設備投資を進めていくようです。そこに経産省も支援をするようで、北海道や九州での関連投資が盛んですが、広島も負けてはいないようですね。
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経済産業省:特定半導体生産施設整備等計画の概要
レゾナック、山形工場のSiCエピウエハ生産建屋が竣工

レゾナックは9/16、同社の子会社であるレゾナック・ハードディスクの山形工場でSiCエピウエハの生産建屋竣工式を9/12に開催したと発表しました。
この新工場はパワー半導体向けのSiCエピウエハ生産能力増強を目的に2024年9月から建設を進めてきたもので、経済産業省から経済安全保障推進法に基づく半導体部素材の供給確保計画の認定を受けています。
今後、生産に向けた準備のために各種の装置を導入し、2026年からの稼働が計画されています。
レゾナックがSiCウエハの生産能力増強を進めています。デバイスだけではなくウエハでも中国勢の勢いが目立ちますので、国内メーカーにも存在感をどんどんと出していただきたいところです。
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レゾナック・ホールディングス:プレスリリース(9/16)
NVIDIA、インテルに50億ドル出資しDC、PC向けカスタム品を共同開発へ

NVIDIAとインテルは9/19、複数世代にわたるデータセンターおよびPC向けカスタム製品を共同開発していくための提携を発表しました。
その中でNVIDIAはインテルの普通株に50億ドルを投資、1株あたりの購入価格は23.28ドルとなっています。
また両社は、NVIDIAのNVLink 技術を活用して両社のアーキテクチャをシームレスに統合し、NVIDIAのAI及びアクセラレーテッドコンピューティングの強みと、インテルのCPU 技術やx86エコシステムを組み合わせることによって顧客に最先端のソリューションを提供することを目指すとしています。
NVIDIAが米国政府、ソフトバンクに続きインテルへ出資をするようです。その金額もさることながら、両社で共同開発もするということで時代の転換点を迎えた感があります。提携が上手くいくのかどうか、今後に注目ですね。
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NVIDIA:プレスリリース(9/19)
熊本県立大、半導体学部設置構想案を発表

熊本県立大学は9/22、熊本県との共同記者会見を開催して同大学の半導体学部設置構想案を発表しました。
同大学では2025年6月に半導体関連人材の育成強化について公表しており、今回具体的な方向性について内容が定まったため構想案が発表されました。
構想案では、半導体学部半導体学科を2027年4月に開設、定員は60名で教員16名の体制とされています。
養成する人材像としては、「半導体に関する専門知識と技術並びに半導体に関わる様々な分野についての横断的な知識習得、実践的な教育と研究を通じて地域と国際社会の発展に貢献できる人材」となっています。
今後は2026年3月に文部科学省へ設置認可申請書を提出し、最速で2026年8月末までに認可され、2027年4月に開設される計画です。
熊本県立大学の半導体人材育成の構想案が具体的になりました。半導体学部半導体学科というストレートなネーミングは個人的にいいと思っています。そして計画通りに事が進むことを願っています。
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熊本県立大学:プレスリリース(9/22)
テクセンドフォトマスク、東証プライム市場への新規上場が承認

テクセンドフォトマスクは9/22、東京証券取引からプライム市場への新規上場が承認されたと発表しました。
同社は、その前身である凸版印刷(現在のTOPPANホールディングス)が1961年にフォトマスク事業を始めており、2021年12月に会社分割によって誕生した半導体用フォトマスクの製造販売をするメーカーです。
今後は2025年10月8日に公開価格が決定し、同月16日に上場が予定されています。これによって親会社であるTOPPANホールディングスは、現在の50.1%の保有割合が46.6%に低下し、今後は持分適用会社となる見込みです。
今回の上場はテクセンドフォトマスクが独立した企業体として、更なる成長と競争力強化が目的ということです。ある報道では時価総額が3,000億円を目指すとしており、現在の好調な株式相場の波に乗れるかどうかですね。
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テクセンドフォトマスク:プレスリリース(9/22)
ローム、インフィニオンとSiCパワーデバイスのパッケージ共通化で協業へ

ロームは9/25、インフィニオンテクノロジーズとSiCパワーデバイスのパッケージに関する協力体制構築についての覚書を締結したと発表しました。
今回の協業は、車載充電器や太陽光発電、エネルギー貯蔵システム、AIデータセンターなどで採用されるSiCパワーデバイスのパッケージにおいて、両社が相互に供給するセカンドソース体制の構築を目指すというものです。
これによって将来的には両社からら互換性のある製品の調達が可能となるため、ユーザーニーズに応じて、製品を併用するほか、切替も容易になるとしています。
また今後については、Siはもちろん、SiCやGaNなどのさまざまなパッケージについて協業を拡大する計画です。
ロームとインフィニオンがパッケージの共通化を進めるようです。両社ともパワー半導体の分野ではライバルになりますが、中国勢の台頭などもありますので共通化できる点については協業を進めるようですね。
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ローム:プレスリリース(9/25)
