2022年5月に半導体業界で生じたニュースを11本ご紹介します。
今月は半導体製造メーカーや半導体製造装置メーカー各社の2022年1月から3月期決算や2021年度決算発表が多くありました。
各社の好調な様子がうかがえました。
今や半導体はなくてはならない重要な部材であり、インフラとも言われていますので今後も業界全体の推移に期待したいです。
動画で解説:半導体業界ニュース2022年5月
2022年5月1週目のニュース
インテル、2022年第1四半期の売上高は前年同期比7%減
インテルは4/28に2022年第1四半期(1月~3月期)の決算を発表しました。
売上高が前年同期比7%減の183億5300万ドル(約2兆4000億円)、純利益は同141%増の81億1300万ドル(約1兆円)でした。
純利益としては大きく向上していますが、同じ期間の売上高を40%程度増加させたTSMCやサムスン電子と比較しますと、インテルの不調が際立っています。
2022年通年の業績予想については、売上高を約760億ドルに据え置くと発表していますが、これは2021年通年の実績額を下回る数値で、今年の成長については期待できないとしています。
最高経営責任者(CEO)であるパット・ゲルンシンガー氏は世界的な半導体不足について、「生産能力や生産設備は急に増やすことは難しいため、少なくとも2024年まで続く」と述べています。
純利益や利益率だけをみますと不調とは言えませんが、前年や他社と比較すると苦しい状況が垣間見えます。
とは言え、製造能力増強の手は打っていますので、23年から24年にかけては期待できるのではないかと捉えています。
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インテル:プレスリリース(4/28)
AMD、2022年第1四半期の売上高は前年同期比71%増
AMDは5/3に2022年第1四半期(1月~3月期)の決算を発表しました。
売上高は前年同期比71%増の58億8700万ドル(約7600億円)、純利益は同42%増の7億8600万ドル(約1000億円)でした。
2022年通年の売上高については、前年比60%増の236億ドルとの見通しを明らかにしています
2021年も前年比で60%を超える成長をしていますが、その勢いはまだまだ止まらないようです。
AMDの会長兼最高経営責任者(CEO)であるリサ・スー氏は、「EPYCプロセッサの収益が3四半期で2倍以上になったことをはじめ、今期はすべてのセグメントで前年同期比で2桁の成長を遂げることができた。主力製品に対する需要は引き続き堅調で、通期ガイダンスの上方修正は既存事業の拡大と、成長中のXilinx事業の追加を反映している」と述べています。
AMDの勢いが止まりません。売上高だけでみればインテルの1/3以下ですが、成長率は雲泥の差が出ています。CPUにおけるシェア争いでますますインテルを追い上げていきそうです。
今後も引き続き注目ですね。
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AMD:プレスリリース(5/3)
サムスン電子、2022年第1四半期の売上高は前年同期比39%増
サムスン電子は4/28に2022年第1四半期(1月~3月期)の決算を発表しました。
半導体事業部門の売上高は前年同期比39%増の26兆8700億ウォン(約2兆7400億円)、営業利益は同152%増の8兆4500億ウォン(約8600億円)でした。
その中でもメモリ事業は堅調な需要によってサーバー向けの売上高が四半期別として過去最高を記録しました。
ファウンドリビジネスにおいても、堅調な需要と歩留り向上が寄与して、過去最高の第1四半期の売上高を達成しています。
サムスン電子も相変わらず好調のようです。
もともと強いDRAMやNANDフラッシュに加えて、ファウンドリビジネスでも過去最高の売上高を更新しています。量産品の歩留り向上が進んでいるようですし、3nmプロセスの開発も継続してく模様ですので、ファウンドリビジネスのシェア拡大が期待できそうです。
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サムスン電子:プレスリリース(4/28)
SKハイニックス、2022年第1四半期の売上高は前年同期比43%増
SKハイニックスは4/26に2022年第1四半期(1月~3月期)の決算を発表しました。
売上高は前年同期比43%増の12兆1600億ウォン(約1兆2400億円)、純利益は同100%増の1兆9800億ウォン(約2000億円)でした。
第1四半期の売上高は、メモリバブルに沸いた2018年第1四半期を上回る売上げを達成しており、営業利益も2018年第1四半期を上回り、第1四半期としては過去最高を更新しています。
この背景には、サムスン電子と同様にサーバー需要の高まりがあるとみられています。
加えて、今後もメモリ市場は成長を続けると予想しており、1a-nm DRAM製品(10nmノードの第4世代)と176層4D NANDの歩留りを向上させながら、生産量を増やし、さらに次世代製品の開発も順調に進んでいるとしています。
サムスン電子と並びSKハイニックスの業績も好調に推移しています。メモリ業界も需要が高い状態が続いているようです。この2社に負けないように日本のキオクシアにも頑張ってもらいたいです。
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SKハイニックス:プレスリリース(4/26)
2022年5月2週目のニュース
日本電産、半導体ソリューションセンターを設立
小型精密モーター大手の日本電産は、5/11に5/16付けで半導体ソリューションセンターを設立したことを発表しました。
設立の背景としては、現状の不安定な世界情勢やコロナ禍、自然災害に端を発した半導体不足があります。
この半導体不足は2022年中にやや改善が見込まれているものの、世界的な需要増やコロナ禍による生産への影響等によって、半導体産業を取り巻く環境はこれまで以上に先が見通しづらい状況になっていると考えられています。
そのため日本電産は同センターを設立し、サプライヤーとの戦略的パートナーシップを築き、あらゆるリスクに対応できるサステナブルな半導体サプライチェーンを確立して安定した生産と供給の実現を目指すとのことです。
同センターは中央モーター基礎研究所内に設立され、所長には元ルネサスで車載事業を牽引した大村隆司氏が就任します。
日本電産が半導体ソリューションセンターを設立して、半導体の内製化を進める方針を明らかにしました。
関潤COOのコメントにありますように、半導体の内製化が実現すれば日本電産の今後の成長の柱となるE-Axle(モータ・インバータ・減速機を三位一体にしたEV用ユニット) の垂直統合が可能になります。
とは言え半導体の内製化は一筋縄ではいきません。自社で工場を作るのか、日本電産が得意としているM&Aでいくのかも未発表です。
これから半導体工場を建設するよりは、既存工場を買う方が現実的と思いますが、となればどこを買うのか。半導体業界として日本電産の動向に注目です。
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日本電産:プレスリリース(5/11)
佐賀大学など、ダイヤモンド半導体デバイスの出力電力の世界最高値更新立
佐賀大学とアダマンド並木精密宝石は、5/10にダイヤモンド半導体によるパワー半導体デバイスを用いて、従来の出力電力記録である345MW/cm2を2倍以上更新する875MW/cm2を計測したことと、出力電圧2568Vを達成したことを発表しました。
ダイヤモンドは、半導体素材として究極の特性を有することが理論的に知られており、高周波で大電力性能のパワーデバイスとして世界中で研究が行われてきましたが、これまでは、窒化ガリウムの特性が上回っていました。
今回の記録は、昨年9月に発表された世界最高の出力電力値(345MW/cm2)を塗り替える出力電力875MW/cm2および出力電圧2568Vで動作したとのことです。 出力電力値、動作電圧値ともダイヤモンドとしては世界最高で、半導体としては米国MITが発表している窒化ガリウムによる2093 MW/cm2の次ぐ値となります。
今後はデバイスの周辺技術の研究開発を進め、先行研究を凌駕する性能を目指すと共に、本格的に実用化に向けた研究開発も進めていくとのことです。
佐賀大学は先月、ダイヤモンド半導体の2インチウエハ量産技術開発も発表しています。まだまだ研究開発段階ではありますが、研究が加速しているように見受けられます。
理論的な性能値は高いことがわかっている材料ですので、実用化に向けた開発が進むことを期待したいです。
そのために国からの補助や企業との共同研究がされるとよいと思うのですが、研究開発に投資する日本企業はないでしょうか。出てきてほしいものです。
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佐賀大学:プレスリリース(5/10)
キオクシア、2022年3月期業績は前年度比30%増で黒字化達成
キオクシアは5/13に2022年3月期(2021年4月~2022年3月)の業績発表を行いました。
売上高は前年度比30%増の1兆5265億円、純利益は1059億円でした。
2021年3月期は純利益が245億円の赤字でしたので、黒字化転換を達成しました。
売り上げが向上した背景には、クラウド向け投資と企業のIT投資があり、データセンター・エンタープライズSSD関連が伸長したことがあげられています。
加えて、5Gへの移行に伴うスマートフォンのメモリ搭載容量の増加トレンドも継続していることも要因のひとつです。
ただし、第4四半期に四日市工場と北上工場で生じた半導体部材への不純物混入の影響で、廃棄した仕掛品コスト及び稼働しなかった期間の製造固定費などを含む332億円分の損失が発生したことが営業利益を引き下げたとしています。
キオクシアの業績が改善されています。工程内への不純物混入というトラブルがありましたが、それでも売上高は前年度比30%増、純利益は黒字化転換しています。
今後は四日市工場の第7製造棟稼働や北上工場の第2製造棟建設が予定されています。
NAND市場はまだまだ成長することが見込まれていますので、今後のシェア拡大、業績向上を期待したいです。
東京エレクトロン、2022年3月度の売上高は前年比43%増の2兆円超
東京エレクトロンは5/12に2022年3月期(2021年4月~2022年3月)の決算を発表しました。
売上高、利益ともに過去最高を更新しています。 売上高は前年度比43%増の2兆38億円となり、はじめて2兆円の大台を突破しました。
営業利益は同87%増の5992億円、純利益も同80%増の4370億円でした。
半導体製造装置の新規装置売り上げは前年度比56%増であり、製品別売上構成比はコータ/ディベロッパが23%、エッチング装置が39%、成膜装置が21%、洗浄装置が11%となっており、すべての製品で売上が増加しています。
さらに23年度の業績予想では売上高が17.3%増、営業利益が19.5%増を見込んでおり、過去最高を更新する予想となっています。
東京エレクトロンも好調のようです。売上高が2兆円を超え、さらに23年度は二桁の増加が見込まれています。
大手の半導体製造メーカーが相次いで新規工場建設を進めていますので、当分の間は装置の需要も続きそうです。
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東京エレクトロン:プレスリリース(5/12)
2022年5月3週目のニュース
ルネサス、甲府工場でパワー半導体生産の300mmライン投資
ルネサスエレクトロニクスは5/17、2014年に閉鎖した甲府工場(山梨県甲斐市)に900億円規模の設備投資を行い、300mmウエハ対応のパワー半導体生産ラインを2024年に稼働させることを発表しました。
近年の世界的な脱炭素の流れを受け、特に電気自動車(EV)向けの需要が急拡大することを見据え、ルネサスはIGBTなどのパワー半導体の生産能力を増強することで、脱炭素社会の実現に貢献を目指すとのことです。
甲府工場でパワー半導体の本格的な量産が開始されることによって、ルネサスのパワー半導体の生産能力は現在の2倍になることが見込まれています。
本設備投資は、経済産業省の半導体戦略を踏まえ、同省とも緊密に連携し、2022年中に実施する予定ということです。
パワー半導体における300mmウエハラインへの投資が日本でも進んできました。海外ではインフィニオンなどが既に量産を開始していますが、日本企業勢はやや出遅れています。
デンソーがUMCと協業してUMC傘下のUSJC三重工場で2023年から、東芝は加賀東芝エレクトロニクスで2024年からの生産を目指す方針を明らかにしており、ルネサスもそれに続く格好です。
出遅れ感は否めませんが、パワー半導体の大口顧客である自動車産業が日本にはまだありますので、期待したいところです。
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ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(5/17)
TI、米国テキサス州にて新規300mm工場建設着工
テキサスインスツルメンツは5/18に米国テキサス州シャーマンにて新規300mm工場建設に着工したことを発表しました。
今回の工場建設の投資額は約300億ドル(3兆9000億円)で、アナログ半導体及び組み込みプロセッシングチップの製造を行います。
この投資には4つの製造工場が計画されており、約3000人の雇用が見込まれているとのことです。
シャーマンの第1工場での生産開始は2025年が予定されています。
TIが300mm工場建設に巨額の投資を行うことを発表しました。
TIはアナログ半導体を得意としており、先端プロセスのような微細化は必要ないと考えられますが、300mm化の口径拡大は数量確保とコスト低減のために必要なのでしょう。
それにしても300億ドルの投資とは、どこもそうですが桁違いの金額ですね。
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テキサスインスツルメンツ:プレスリリース(5/18)
2022年5月4週目のニュース
エヌビディア、2023年度第1四半期決算は減益となるが過去最高の売上
米国エヌビディアは5/25に2023年度第1四半期(2022年2月~4月期)の決算を発表しました。
売上高が82億8800万ドル(約1兆円)で前年同期比46%増、これは過去最高の売上高です。
営業利益は18億6800万ドル(約2400億円)で同4%減、純利益が16億1800万ドル(約2000億円)で同15%減でした。
内訳として、データセンター部門が37億5000万ドルで前年同期比83%増、ゲーミング部門が36億2000万ドルで同31%増の売上高を記録し、売上高大幅増の牽引役を担いました。
エヌビディアの創設者兼CEOであるジェンスン・フアンは、「インテリジェンスを自動化するためのディープラーニングの有効性により、さまざまな業界の企業がAIコンピューティングにエヌビディアを採用するようになっている。」と述べています。
来期の見通しについては、ロシア情勢および中国のロックダウンに起因する約5億ドル減を含めて、約81億ドルの売上が見込まれています。
数年前まではゲーミング用GPUメーカーであったエヌビディアですが、売上高でもデータセンター部門がゲーミング部門を上回るようになってきました。
世界中の自動車メーカーで開発が進められている自動運転にもエヌビディアのチップが欠かせないとされていますので、今後の更なる成長にも期待できそうです。
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エヌビディア:プレスリリース(5/25)