【半導体業界ニュース】2022年6月のニュースから7本を厳選してご紹介!

2022年6月に半導体業界で生じたニュースを7本ご紹介します。

半導体の重要性が増し、半導体不足が叫ばれる中、今月はデンソーや日本電産などが半導体戦略を発表しました。

目次

動画で解説:半導体業界ニュース2022年6月

2022年6月1週目のニュース

アドバンテスト、パワー半導体用試験装置メーカーの伊クレア社買収

半導体用試験装置大手のアドバンテストは、6/1にパワー半導体用試験装置メーカーであるイタリアのクレア社を買収することを発表しました。

買収額は公表されていませんが、各種報道では数十億円規模と推定されています。

アドバンテストの欧州子会社であるAdvantest Europeを通じて完全子会社化する予定で、関係当局の承認が得られれば2022年中には買収が完了する見込みです。

今回の買収の背景は、自動車のEV化や省エネルギー性能を高めたデータセンターの建設が推進されるなど、効率良く電力を供給するために不可欠なパワー半導体の需要が高まっているためです。

パワー半導体市場は大きな成長が見込まれており、クレア社はパワー半導体用試験装置の開発・製造における長年の豊富な経験を通じ、SiCやGaN半導体への対応も含め、パワー半導体試験に対する卓越した知見を有している点が決め手になった模様です。

アドバンテストの吉田社長は、「本件買収は、進化する半導体バリューチェーンにおいて試験・測定ソリューションを拡大し、より幅広い顧客ニーズに応えることを目的とするもので、今後パワー半導体市場の成長が期待される中で、顧客および当社自身のネットゼロ社会実現に対する貢献度を直接的に高めることにつながると確信しています。」とコメントしています。

コメント

SoCやメモリのテスタで米テラダインと並び大手であるアドバンテストがパワー半導体向けの試験装置メーカーを買収します。製品ラインナップを広げるとともに、今後の大きな成長が見込まれるパワー半導体分野に進出するようです。
ロジックやメモリ系とは異なりパワー半導体の試験では文字通り桁違いの電流、電圧をかけて試験しますので、その知見を有するメーカーを買収することは有効な手段になるのではないでしょうか。
アドバンテストの有力な事業になってくれることを期待したいです。

基ニュース

アドバンテスト:プレスリリース(6/1)

デンソー、不足する半導体調達強化のために戦略説明会を開催

デンソーは6/1に自社で手掛ける半導体の強みを紹介するサイトを開設し、併せて半導体戦略説明会を行って半導体需給ひっ迫への対応状況や今後の技術、調達戦略について説明を行いました

半導体需給ひっ迫への対応として、半導体デバイスメーカーとの間で10年レベルの技術や数量の動向を共有することで、短期発注に加えて年単位での中長期を見据えた発注の取り組みも進めているとしています。

それに加えて、地政学的リスクの把握を進め、想定される事態に対する策を講じたり、取引先も含めた工場などの防火対策・耐震強化なども進めているようです。

出典:デンソー

同社は車載分野で必要とされる半導体をCASE時代を迎えて、電子プラットフォームの変化、電動化の拡大、運転支援の進化の3つの方向性があると認識しているとのことで、高い演算性能を必要とするロジックとしてのマイコン&SoC、必要とする大電流を制御するためのパワー&アナログ、運転支援を実現するために高度化が求められるセンサーの3つの分野に分け、それぞれに合った戦略を採用しているようです。

具体的にみるとマイコン&SoC分野では、仕様・設計・製造の分業で仕様開発に特化して設計と製造はベンダー、ファウンドリと連携します。

パワー&アナログ分野では差別化半導体を内製しており、現在4200億円程度の売り上げを2025年には5000億円程度まで伸ばすことを見込んでいます。

センサー分野では、非車載技術を車載に活用するべくベンダーと連携するとのことです。

出典:デンソー
コメント

デンソーが発表した資料を見ますと、車載半導体売上ランキングでは世界5位に相当するそうです。この数字はなかなか外に出てこないのは恐らく社内で製品にして車両メーカーに販売しているからでしょう。半導体単体として売っていないということです。
近年ではTSMCが作っている熊本工場に出資したり、UMCの三重工場で300mmパワー半導体を協業するなど台湾企業との連携を積極的に進めている印象です。
今後の動向にも注目していきたいです。

基ニュース

デンソー:プレスリリース(6/1)

2022年6月2週目のニュース

日本電産、半導体戦略を発表

出典:日本電産

日本電産は2022年5月に半導体ソリューションセンターの設立を発表しました。

これに伴って同社は6月7日に記者説明会を開催して半導体戦略を発表しました。

半導体ソリューションセンター所長である大村 隆司氏は、「同センターは、半導体サプライヤーやパートナーに寄り添った信頼関係を構築し、Win-Winのエコシステムを築き上げていく」とコメントしています。

日本電産の半導体事業基本戦略としては、Make(モータ・ソリューションの開発) or Buy(半導体調達)の最適配分を図ることとしています。

出典:日本電産

そのための方法論として3ステップをあげています。

1ステップ目は、半導体を安定的に調達するための集中購買戦略です。

日本電産はグループ企業含めての集中購買ができておらず、スケールメリットを活かせていないため、調達に関しては1つにまとめ、それを半導体ソリューションセンターがサポートするとしています。

2ステップ目は、モーターソリューションに必要な半導体を開発、製造するためのRFQ(Request for Quotation)の確立と実行です。

日本電産の製品に必要なQCD(品質・コスト・納期)にマッチした半導体を開発・製造するために技術的仕様、価格、数量を明確にしたQFOを半導体サプライヤに提示して開発採否を判断していくとしています。

3ステップ目は、1ステップ2ステップを実行することで、Nidecインサイドにおけるインテリジェントモータの世界を構築するとしています。

コメント

日本電産が具体的な半導体戦略を発表しました。
今後EV化が進む中では電池と並んでイーアクセルの重要度はどんどん増してきます。
そしてそれを制御する半導体の重要度が増している証拠と言えると思います。かつてのPCにおけるインテルインサイドを彷彿される存在感をEVで出していきたいということでしょう。
センター長の大村氏をはじめとして既に進んでいることが想定されますが、半導体メーカー経験者の採用がさらに進んでいくと考えられます。

基ニュース

日本電産:プレスリリース(6/7)

2022年6月3週目のニュース

LSIの設計手法を構築したミード氏が京都賞受賞

出典:京都賞

公益財団法人稲盛財団(京都市)は6/17に科学や思想の発展に貢献した人物に贈る第37回京都賞の受賞者を発表しました。

先端技術部門で米カリフォルニア工科大学名誉教授のカーヴァー・ミード氏(88)が選ばれました

受賞理由は、「大規模集積回路(VLSI)システム設計の指導原理の構築と確立への先導的貢献」です。

ミード氏は、大規模集積回路(Very Large-Scale Integration: VLSI)の発展の初期段階から、複雑化が進む設計に注目し、設計を階層化することで論理設計と回路設計、レイアウト設計を、製造工程から切り離す方法論を提案しました。

さらに各設計プロセスを自動化することで、半導体設計用のCAD(Computer-Aided Design)技術の基本的な仕組みの構築と確立のために大きく寄与しました。

この結果、システム設計とデバイス製造との分離および両者の効率的共同作業が可能となり、半導体産業の国際的または企業間での分業の素地が形成されることにつながりました。

現在の設計企業(ファブレス)と製造専業企業(ファウンドリ)への分業化が成立する基盤を構築したことが評価されました。

コメント

「京都賞」は、科学や技術、思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞です。
半導体の技術関連ではこれまでも、「モノリシック半導体集積回路の基本概念の創出と実証」でジャック・セントクレア・キルビー氏や「世界初のマイクロプロセッサの開発」で嶋正利氏、「高電子移動度トランジスタの発明とその開発による情報通信技術の発展への貢献」で
三村髙志氏らが受賞しています。
今回受賞しましたカーバー・ミード氏は設計手法の階層化を図ることで製造工程から切り離し、現代の半導体業界における分業化の基礎を構築したことが評価されました。
分業化なくして現在の半導体業界の発展はなかったでしょうから、その貢献は計り知れないものがあるかもしれません。
とは言え、ICやプロセッサの発明、開発とは異なり少々地味な印象がありますが、陰ながら支えている技術を評価されたことに少し驚き、また嬉しくも感じます。

基ニュース

京都賞:受賞者(6/17)

TSMC熊本工場の計画を政府認定、補助金を最大で4760億円支給

日本政府は6/17にTSMCとソニーグループ、デンソーが熊本県菊陽町で建設中の半導体工場の計画を認定しました。

特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法の一部を改正する法律に基づくもので、今回の認定はその第1号です。

認定された事業者としては、TSMC子会社でソニーグループとデンソーが出資するJASMとなります。

補助金は最大で4760億円支給されることになります。

新工場は2024年12月の出荷開始を目指して今年の4月に着工しています。

スクロールできます
事業者JASM
出資者TSMC(過半数株主)
ソニーセミコンダクタソリューションズ(20%未満株主)
デンソー(10%超株主)
総投資額86億ドル
(約1兆1000億円)
補助金4760億円(上限)
主力製品
(回路線幅)
ロジック半導体
(22/28nm・12/16nm)
生産能力5.5万枚/月
(12インチ換算)
出荷開始2024年12月予定
総従業員数1700名
コメント

TSMCが熊本につくる新工場の計画が政府に認定され、最大で4760億円の補助金が支給される見込みです。
当初より補助金を出すこと前提で工場誘致をしてきた経緯からは当然とみることができます。
とは言えこれだけの金額を出すことに対しては、国内産業への波及などの具体的な効果検証をしてほしいものです。すぐにどうこうなるものではありませんので長い目で見る必要がありますが、今後尻すぼみにならないことを切に願います。
また箱モノへの投資に加えて、人材への投資もお願いしたいです。

基ニュース

経済産業省:特定半導体生産施設整備等計画の概要(6/17)

2022年6月4週目のニュース

TSMC、つくばの3次元実装研究拠点を開所

出典:TSMC

台湾TMSCは6/24に子会社のTSMCジャパンが、茨城県つくば市の産業技術総合研究所つくばセンター内に建設していた3DIC(3次元集積回路)研究開発センターのクリーンルームの完成を発表しました。

新たなクリーンルーム設備を備えたTSMCジャパン3DIC R&Dセンターは、材料科学における次世代の3次元シリコンスタッキングおよび高度なパッケージング技術の研究を追求するとしています。

3DICとは半導体チップを積み重ねて高集積化、高性能化を目指す技術のことです。

イビデンやキーエンス、新光電気工業、信越化学工業など国内企業20社超と3DIC技術の共同開発を行うとされています。

総事業費370億円のおよそ半分に当たる190億円を日本政府が助成します。

TSMCと産総研、多くの国内メーカーとの共同開発となることについて、萩生田経産相は「日本の半導体産業はかつては世界を席巻したことがあったものの、メイドインジャパンに固執したため、グローバルのイノベーションの潮流に乗れなかったことが凋落の一因」と指摘しています。

加えて、「次世代半導体の製造技術開発を国際連携のもとで進める重要性を感じている」とコメントしています。

TSMCの魏哲家(CCWei)CEOはつくば入りし「日本と台湾は世界の半導体サプライチェーンで重要なつながりがあり、この施設での協力関係がより多くのイノベーションにつながると確信している」とコメントしています。

萩生田経済産業相と会談も行っています。

オープニングイベント様子(出典:NEWSつくば)
コメント

TSMCのつくばにおける3次元実装研究拠点が完成しました。製造工場ではないですが、早くできた印象です。日本には実装技術に長けたメーカーが多いですから成果を期待したいです。
一方で、TSMCの誘致ありきの補助金という意見もあります。確かに海外資本の一企業に対して税金を投与する訳ですので、それに見合った効果(国内企業や国内産業への波及)をある程度明確な数値で示す必要が今後出てくると考えます。
経済産業省にはその点をお忘れなきようお願いしたいです。

基ニュース

TSMC:プレスリリース(6/24)

KEKなど、有機トランジスタにおける電子の動きのイメージングに成功

使用されたレーザー光源(出典:KEK)

高エネルギー加速器研究機構(KEK)などは6/21、フェムト秒パルスレーザーを励起光源とする光電子顕微鏡法(フェムト秒光電子顕微鏡)を使い、有機トランジスタの動作環境下における伝導電子の動きの可視化に成功したことを発表しました。

半導体は電荷キャリアである電子と正孔が動くことで動作しています。

しかしこれまで実際の電子の動きを可視化する技術はなく、電気的な観測によるものだけでした。

トランジスタが発明されて70年以上たちますが半導体内の局所的な電子の動きは解明されていませんでした。

KEKの福本特任准教授は、フェムト秒光電子顕微鏡を構築し、半導体内の伝導電子を高効率で検出できる手法を開発してきました。

最近の研究から、有機薄膜などの絶縁体に近い材料においても、試料帯電を抑制して伝導電子を画像化できることが判明しています。

そこで今回その手法を応用して有機トランジスタが動作している中での観察を行い、動作解明の試みがされました。

今回の実験では2種類の有機材料を利用することで、室温で負性抵抗を示すアンチアンバイポーラートランジスタ(AAT)が用いられました。

この負性抵抗トランジスタでは、半導体界面(n型半導体とp型半導体が形成する界面)が電子の流れを制御するバルブに相当し、その界面の役割を可視化することにより、動作原理の解明に成功しました。

出典:KEK

今回の成果はパワー半導体動作の直接観測に応用が可能であり、より高効率の次世代パワー半導体の開発につながるとされています。

コメント

実験内容自体は非常に難しいものですが、電子の動きが可視化されていることは画像を見るとよくわかります。電子の動きが見えること自体にとても驚きます。
この技術がパワー半導体への応用も可能ということですので、SiCやGaN、さらに酸化ガリウムやダイヤモンドなど各材料の研究開発が進んでいますがデバイス構造としてより高効率な次世代パワー半導体の開発につながることに期待したいです。

基ニュース

KEK:プレスリリース(6/21)

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