2023年9月に半導体業界で生じたニュースをご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2023年9月号
9月末に公開予定
2023年9月末時点の世界半導体市場と株式市場推移
9月末に公開予定
各ニュース記事:半導体業界ニュース2023年9月号
ラピダス、千歳工場の起工式を開催、25年にパイロットライン稼働へ

ラピダスは9/1、最先端半導体の開発および生産を行うIIM-1(Innovative Integration for Manufacturingの略語)の建設予定地である北海道千歳市の工業団地千歳美々ワールドにおいて、IIM-1の起工式を開催したと発表しました。
起工式には、西村康稔経済産業大臣、鈴木直道北海道知事、横田隆一千歳市長、出資企業であるNTTやトヨタの関係者、ラピダス経営陣らが参加し、代表取締役社長の小池淳義は来賓と起工を祝う式典で、「Rapidus株式会社は、8月10日で創立1周年を迎えました。この短い期間に、本日の起工式を迎えることができたことは、ここにおられる皆さま全員のご支援のたまものであります。本日、無事起工式を迎えることができましたが、これは始まりであり、これからRapidusの名のごとく、前例のないスピードで工場を完成させますので、引き続き皆さまの絶大なるご支援を賜りたくお願い申し上げます。」とコメントしています。
IIM-1において2025年4月にパイロットラインを稼働し、2027年には量産を開始する計画としています。
ラピダスの工場建設がいよいよ本格的に始まります。パイロットライン稼働までに1年半程度という短期間ですが、計画通りに立ち上がるのか引き続き注目です。
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ラピダス:プレスリリース(9/1)
信越と沖電気、GaNパワー半導体のための異種材料基板接合技術を開発

信越化学工業と沖電気工業は9/5、QST基板と呼ばれる複合材料基板からGaNの機能層のみを剥離し異種材料基板へ接合する技術を共同開発したと発表しました。
GaNは、1,800V以上の高耐圧が求められるパワー半導体やBeyond 5G向けの高周波デバイス、高輝度なマイクロLEDディスプレイなど、高デバイス特性と低消費電力を両立する次世代半導体材料として注目されています。 特に縦型のGaNパワー半導体は、EVの走行距離延長や給電時間の短縮などの機能向上のキーとして、今後の需要拡大が期待されています。一方で縦型GaNパワー半導体の実用化に向けては、大きく2つの課題があります。
- 生産性を向上するためのウエハ大口径化
- 大電流制御を可能にするための縦型導電の実現
信越のQST基板は、GaNと熱膨張係数が同等であるため、反りやクラックの抑制が可能。この特性によって現状は6,8インチウエハをラインナップしており、今後は12インチ化を進めるとしています。 沖電気はCFB技術と呼ばれる、QST基板からGaN機能層のみを剥離する技術を開発しました。
両社の技術を組み合わせることで、今後GaNパワー半導体の実用化を進めるとしています。
GaNパワー半導体の実用化に向けた技術開発が進んでいます。信越化学はSiウエハでは世界トップの企業ですが、最近実用化が進んでいるSiCではあまり聞きません。GaN基板の方に注力されているのでしょうか。今後の実用化に向けた進展に期待したいです。
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信越化学工業:プレスリリース(9/5)
沖電気工業:プレスリリース(9/5)
インテル、タワーセミコンダクターにファウンドリサービスを提供へ

インテルは9/5、タワーセミコンダクターにファウンドリサービスを提供する契約を結んだと発表しました。
この契約によってタワーセミコンダクターは米国ニューメキシコ州リにあるインテルのFab11Xを利用できるようになります。
さらにタワーセミコンダクターは最大3億ドルを投じて、同工場に自社の生産設備を整備する予定です。 タワーセミコンダクターは65nmパワーマネジメントBCD(Bipolar-CMOS-DMOS)、RF SOIプロセスの製造を行うとしています。
インテルはタワーセミコンダクターを買収する計画でしたが、関係当局の承認を得られず8月に断念しています。その際に今後も協力の機会を探し求めていくとしてましたが、早速実現した形です。
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インテル:プレスリリース(9/5)
アーム、ナスダックに上場し時価総額は9兆円超え

ソフトバンクグループ傘下の英国アームは9/14、ナスダックに新規上場しました。 売り出し価格である51ドルを25%上回る63.59ドルで初日の取引を終え、時価総額は652億ドル(約9兆6,000億円)となりました。
アームは英国ケンブリッジに本社を置く半導体設計会社で、2016年にソフトバンクが買収をしています。 組込み危機からスーパーコンピュータまで様々な機器に用いられる32ビット及び64ビットアーキテクチャの設計をしており、高パフォーマンスでありながら低コスト、低消費電力であるため、数多くの企業がアームベースのチップを設計、製造しています。
2020年にはエヌビィディアが買収を試みましたが、各国当局の承認を得ることができず、2022年に断念した経緯があります。
アームの価値が市場からも評価された形です。それにしても円安とはいえ、日本円にして10兆円に迫る途方もない金額です。AI関連にも使われていますので、今後ますます成長しそうな予感がします。
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ソフトバンクグループ:プレスリリース(9/14)
堀場製作所、半導体プロセス要素技術開発用新棟を建設へ

堀場製作所の子会社である堀場エステックは9/20、研究開発拠点である「京都福知山テクノロジーセンター」に新棟を増設すると発表しました。 現施設に隣接する土地は既に取得済みで、2024年1月に着工、2025年4月に竣工予定です。
京都福知山テクノロジーセンターは2013年12月に開設した同社の半導体プロセスにおける研究開発拠点です。 コア技術であるガス流量制御や液体気化技術の高度化と、次世代技術の強化を目的として、今回の新棟増設に至ったとしています。
堀場製作所は流体の質量流量を計測し流量制御を行う機器であるマスフローコントローラで世界シェアトップの企業です。先端半導体プロセスにおいても生産性向上や歩留り改善といった課題解決のためにより高度な制御が求められますので、そうした技術開発が進むことを期待したいです。
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堀場エステック:プレスリリース(9/20)
キオクシアとウェスタンデジタルが経営統合を検討、ブルームバーグが報道

ブルームバーグは9/20、キオクシアホールディングスと米国ウェスタンデジタルの経営統合を支援するため、三井住友銀行など3メガバンクが最大2兆円の融資実行に向けて検討に入ったと報道しました。
同報道によりますと、キオクシアとウェスタンデジタルは共同で持ち株会社を設立、出資比率はWDが50.5%、キオクシアが49.5%となり、持ち株会社の下にNANDフラッシュメモリを生産するキオクシアなどの事業子会社をぶら下げる構成であり、フラッシュメモリ事業子会社は当初、ナスダック市場での上場を維持するが、将来的には東京での上場を目指すとしています。
キオクシアは現在、世界的なメモリ不況の影響によって三四半期連続で赤字を計上している非常に苦しい状況です。
キオクシアとウェスタンデジタルの経営統合は過去にも何度か報道されては立ち消えとなっている案件です。今回も現実的に進むかは定かではありません。実際に話が進んだとしても各国当局、特に中国が承認するかはかなり不透明です。ただ仮に経営統合が実現した場合はNANDフラッシュメモリのシェアがサムスン電子を抜いて世界トップに躍り出る見込みです。今回はどうなるのでしょうか、引き続き注目していきます。
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ブルームバーグ:記事(9/20)
KOKUSAI ELECTRIC、10月に東証プライム市場への上場が承認

KOKUSAI ELECTRICは9/21、東京証券取引所からプライム市場への新規上場が承認されたと発表しました。 上場予定日は10/25、上場時の時価総額想定は4,000億円を超えると見込まれています。
KOKUSAI ELECTRICの前身は、日立製作所の子会社として事業運営していた日立国際電気における半導体製造装置事業です。米投資ファンドKKRが2018年に買収した日立国際電気の半導体製造装置部門を分社する形で誕生しました。 成膜装置に強くバッチ式成膜装置では世界シェア1位の企業です。
KOKUSAI ELECTRICはKKRの買収や、破談となったAMATによる買収などここ数年は紆余曲折があったようですが、東証に上場することになったようです。上場によって資金調達を受けて研究開発やシェアの拡大に努めていただきたいです。
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KOKUSAI ELECTRIC:プレスリリース(9/21)