2024年2月に半導体業界で生じたニュースを11本ご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年2月号
2024年2月末時点の世界半導体市場と株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年2月号
サンケン電気、能登半島地震で被災した2工場で一部生産開始
サンケン電気は1/30、令和6年能登半島地震の影響について第九報を公表し、堀松工場・能登工場における一部の生産工程で生産を再開したと発表しました。
当初、堀松工場・能登工場の生産工程再開は2月上旬としていましたが、生産準備が整い1/30から一部の生産を再開したということです。 両工場は今後も引き続き生産ラインの復旧活動を進めてすべてのラインの生産再開を行う見込みです。
また、2/5に公表された第十報によりますと、志賀工場は電力復旧し各設備の確認作業を進め、一部生産工程を2月中旬生産再開を目指すとしています。
能登半島地震で甚大な被害を受けたと思われる石川サンケンが、一部の生産ラインに限られますが生産を再開したということです。従業員の方はもちろん、装置メーカーなどの関係者の努力の賜物と想像されます。引き続きの復旧活動を応援していきたいです。
経済産業省、NTTなどの光電融合技術に約450億円を支援
経済産業省は1/30、NTTなどが進める光電融合技術の開発に対して約450億円の支援をすると発表しました。
経済産業省が所管する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」に係る公募を実施し、光電融合関連の3案件が採択されました。
- 光チップレット実装技術の研究開発
NTTグループと古河電気工業、新光電気工業が進めます。 - 光電融合インタフェースメモリコントローラの研究開発
NTTとキオクシアが進めます。 - 高効率な確定遅延コンピューティング基盤技術の研究開発
NTTとNEC、富士通が進めます。
NTTなどの国内企業が進める光電融合技術の研究開発に国の支援が決まりました。経済産業省が描く半導体戦略のステップ3に位置する将来技術の研究開発に該当します。当然のことながら、すぐに成果が出るものではありませんので長期的な視点に立った継続的な支援と企業投資を期待したいです。
- 基ニュース
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経済産業省:プレスリリース(1/30)
インフィニオン、ホンダと車載用半導体で戦略的協力関係を構築へ
インフィニオンテクノロジーズは2/1、本田技研工業(ホンダ)と戦略的協力関係を構築するための覚書を締結したことを発表しました。
ホンダは、インフィニオンを半導体パートナーとして、
- 将来製品および技術ロードマップを共有
- 両社は、安定供給に関する協議を継続する
- 相互の知識移転を促進し、技術の市場投入までの時間短縮を目的として協力する
ことで合意したということです。
今回の協業は、パワー半導体、先進運転支援システム (ADAS) およびE/Eアーキテクチャの分野に焦点をあてるとしています。
自動車における半導体の重要性が今後ますます増えていく中、ホンダはインフィニオンと協業するということです。国内の半導体企業にも頑張っていただきたいところではありますが、現状を鑑みますと合理的な企業判断だとも思います。
- 基ニュース
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インフィニオンテクノロジーズ:プレスリリース(2/1)
キオクシア、フラッシュメモリに4500億円投資、経産省は1500億円支援
キオクシアは2/6、ウエスタンデジタルと共同で三重県の四日市工場、岩手県の北上工場における第8,9世代の3次元フラッシュメモリを生産する設備投資計画が、経済産業大臣により「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」に基づく「特定半導体生産施設整備等計画」に認定されたと発表しました。
四日市・北上の両工場への設備投資額は約4,500億円となっており、そのうち経済産業省が最大1,500億円を助成する見込みです。 今回の投資によって生産する第8,9世代フラッシュメモリは初回出荷が2025年9月の予定となっています。
キオクシアとウエスタンデジタルの両社は、20年以上にわたるジョイントベンチャーパートナーシップを活かし、日本国内において最先端フラッシュメモリの開発・生産を強化していくと述べています。
キオクシアは昨年のメモリ不況によって直近は厳しい業績となっています。ただそうした中であっても投資の手を緩めると競争力の低下を招きますので、設備投資を行い、そこに国が支援をするようです。
- 基ニュース
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キオクシア:プレスリリース(2/6)
経済産業省:特定半導体生産施設整備等計画の概要(2/6)
TSMC、熊本第2工場建設を決定、新たにトヨタも出資へ
TSMC、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車は2/6、TSMCの製造子会社であるJASMへの追加投資を行い、第2工場を建設することを発表しました。
第2工場は2024年末に建設着手し、2027年末に稼働開始予定となっています。 2024年から量産出荷が予定されている第1工場と今回建設が決定した第2工場を合わせると、JASMへの総投資額は200億ドル(約3兆円)を超えることになります。
両工場では、自動車、産業、民生、HPC用途向けの 40、22/28、12/16、 6/7nmプロセス技術による製造を行い、生産能力は300mmウエハ換算10万枚/月以上となる見込みです。
今回、新たにトヨタが出資し、各社のJASMへの出資比率はTSMCが約86.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズが約6.0%、デンソーが約5.5%、トヨタが約2.0%となります。
長らく噂されていましたJASM第2工場建設が正式に発表されました。第1工場には経済産業省が4,760億円を助成していますが、第2工場にはそれを上回る金額の助成が想定されます。こちらにも注目です。
- 基ニュース
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TSMC:プレスリリース(2/6)
ソニーセミコンダクタソリューションズ:プレスリリース(2/6)
デンソー:プレスリリース(2/6)
トヨタ自動車:プレスリリース(2/6)
経済産業省、LSTCの次世代半導体開発に約450億円を支援
経済産業省は2/9、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発の実施者として技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)を採択したと発表しました。
採択された開発テーマは下記の2件です。
- Beyond 2nm世代向け半導体技術開発
- 2nm世代半導体チップ設計技術開発
LSTCは従来性能を凌駕する2nmノード以細の半導体を短TATで製造可能とするために必要な回路設計・デバイス・製造・装置/材料技術を策定し、組合員や外部機関と連携して要素技術研究を実施、研究成果の実用化を行うことを目的として2022年に設立された研究組合です。 組合員はラピダス、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所の他、準組合員として東京大学などの大学が参画しています。
今回採択された開発テーマは、ラピダスが実現を目指す2nmプロセスの設計技術、さらにはその先のBeyond 2nm世代のデバイス、材料、プロセス技術などが対象となっています。困難な内容であることは容易に想像できますが、夢のある内容ですね。
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経済産業省:プレスリリース(2/9)
LSTC:プレスリリース(2/9)
レゾナック、石油化学事業を分社化し半導体材料分野に集中へ
レゾナックは2/14、2023年度通期決算発表に合わせて戦略説明会を行い、石油化学事業を分社化の検討を開始し今後は半導体材料分野へ経営資源を集中する戦略を取ることを発表しました。
同社では事業ポートフォリオ改革としてこれまでに9つの事業を売却しています。石油化学事業については、分社化を2,3年後に実現するために2024年度末に向けて検討を進めるということです。
今後はAIの進展を通じて半導体材料業界の変革をリードするべく市場成長期待が高い半導体事業に集中的な投資を行う見込みです。
レゾナックでは元々半導体・電子材料事業への集中を謳っていましたが、石油化学事業を切り離して集中させるという点には驚きました。同社として石油化学事業は売上高で2割程度を占めていますので、会社の方向性を示す経営者の明確な意思が表れているのではないでしょうか。
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レゾナック:プレスリリース(2/14)
ルネサス、PCB設計ソフトを手掛けるアルティウムを約9000億円で買収
ルネサスエレクトロニクスは2/15、プリント基板(PCB)設計用ソフトウェアなどを手掛けるアルティウム(Altium)を買収することを発表しました。
買収金額は91億豪ドル(約8,879億円)で、同社がこれまで実施してきた企業買収の中では最大規模となります。
アルティウムは1985年にオーストラリアで創業し、現在は本社を米国カリフォルニア州サンディエゴに置いています。 今回の買収契約は、両社の取締役会において全会一致で承認されており、規制当局の承認などを経て2024年下半期中に完了する予定です。
ルネサスではこれまで、インターシルやIDT、ダイアログ、トランスフォームなどの企業買収によって半導体ポートフォリオの拡充を図ってきました。しかし今回はECADと呼ばれるソフトウェア企業の買収であり、その金額も過去最高となっています。柴田CEOがコメントしているように半導体メーカーに加えてプラットフォーム企業としての強化を図るようです。今後も楽しみですね。
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ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(2/15)
TSMC、熊本工場の開所式を開催 創業者のモリス・チャン氏らが出席
TSMCの製造子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)は2/24、熊本県菊陽町の熊本第1工場で開所式を開催しました。
この開所式にはTSMC創業者であるモリス・チャン氏やマーク・リュウ会長、C.C.ウェイCEOが出席しました。 さらに斉藤健 経済産業大臣、甘利明 自民党半導体戦略推進議員連盟会長、萩生田光一 元経済産業大臣らの政府関係者の他、パートナー企業であるソニーグループの吉田憲一郎会長兼CEO、デンソーの林新之助社長、トヨタ自動車の豊田章男会長らも出席してテープカットを行いました。 岸田文雄首相からはビデオメッセージが寄せられています。
熊本第1工場は2024年末の初回出荷を予定しています。
TSMCの熊本工場が完成し、年末の初回出荷に向けて生産準備が進められるようです。工場の建物ができ、現在まさに進められていると思われる設備の搬入と立上げ、生産条件の確認や試作評価などが着々と進められていくと考えられます。当初の計画通りに立ち上がっていくのか今後も注目です。
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TSMC:プレスリリース(2/24)
経済産業省、TSMC熊本第2工場に最大7320億円の助成を決定
経済産業省は2/24、TSMC熊本第2工場の建設に最大で7320億円を助成することを発表しました。
同工場建設計画について、認定特定半導体生産施設整備等計画として認定したものです。 熊本第2工場については敷地面積が約32.1万㎡、建設面積が約8.8万㎡となっており、第1工場よりも大きな工場となる見込みです。
生産する製品は第1工場と同じロジック半導体ですが、より微細なプロセスノードである6nm品を生産する予定となっています。 2024年中に着工を開始し、2027年末に初回出荷の計画です。
かねてから噂されていました熊本第2工場への支援が第1工場の開所式に合わせて発表されました。建設地は今後決定となっていますが、敷地面積が決まっている点や生産効率を考えますと第1工場の隣接地に建設される見込みです。このあたりも今後発表されると考えられます。
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経済産業省:プレスリリース(2/24)
ラピダス、テンストレントとエッジAIアクセラレータの開発・製造で協業
ラピダスは2/27、2nmロジック技術によるエッジAIアクセラレータの開発に関して、AIのためのコンピュータを構築する次世代コンピューティングカンパニーであるテンストレントと共に推進していくことを発表しました。
今回の協業は、LSTC(技術研究組合 最先端半導体技術センター)がNEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究 開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」において、採択された「2nm世代半導体技術によるエッジAIアクセラレータの開発」プロジェクトで行われます。
ラピダスとテンストレントは2023年11月にパートナーシップ合意をしており、本件はこのパートナーシップを具現化するひとつの事例としています。
ラピダスが目指す2nmノードのロジック半導体について、課題のひとつであるユーザー不在(未定)が少しずつですが解消されているようです。テンストレントが持つ設計技術とチップレットIPをラピダスが実現しようとしている製造と上手く融合できることを期待したいです。
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ラピダス:プレスリリース(2/27)