2024年6月に半導体業界で生じたニュースを10本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年6月号
2024年6月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年6月号
ラピダスとIBM、チップレットパッケージ技術に関するパートナーシップを締結
ラピダスとIBMは6/4、2nm世代半導体のチップレットパッケージ量産技術確立に向けたパートナーシップを締結したと発表しました。
これによってラピダスはIBMから高性能半導体向けのパッケージ技術に関する供与を受け、技術確立の協業を進めるとしています。
今回のパートナーシップ締結は、NEDOの「2nm世代半導体のチップレットパッケージ設計・製造技術開発」の枠組みにおける国際連携の一部として行われ、ラピダスの技術者はIBMのパッケージの研究開発製造拠点において協働するとのことです。
ラピダスはIBMが長年にわたり研究開発製造の技術を蓄積してきた半導体パッケージの技術を活用することで、最先端のチップレットパッケージ技術の早期確立を目指すとしています。
ラピダスとIBMは既に2nm世代プロセス半導体の共同開発を目下進めています。これに続きチップレットパッケージの技術確立に関してもIBMとパートナーシップを締結したということです。今後の具体的な成果に期待をしたいです。
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ラピダス:プレスリリース(6/4)
ルネサス、インド工科大学と半導体システム分野における産学連携締結
ルネサスエレクトロニクスは6/5、インド工科大学ハイデラバード校とVLSIおよび組込み半導体システム分野における3年間の産学連携に関する基本合意書を締結したと発表しました。
インド工科大学ハイデラバード校は、2008年にインド政府によって設立された8つのインド工科大学のひとつで、設立から15年という短期間で国内トップクラスの教育機関となって世界的な評価を受けている大学です。
今回の基本合意書の締結によってインド工科大学ハイデラバード校は「自立したインド」実現に向け、インド半導体産業の成長に貢献する人材の育成が可能になるとしています。
ルネサスではインド国内トップクラスの教育機関との連携を通じて、インドにて優秀な従業員を増やし、インドの莫大な市場機会を捉えていくという方針です。
ルネサスは今年インドにOSAT工場を設立する合弁会社に出資しています。2023年には開発拠点も設けています。今後のインドの発展に向けて、優秀な人材確保のために大学との連携を図るようです。
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ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(6/5)
ラピダス、北海道大学と教育・研究に関する包括連携協定を締結
ラピダスは6/5、北海道大学と半導体産業を通じた科学技術力の向上及び人材の育成に資することを目的として、教育・研究等に関しての包括連携協定を締結したと発表しました。
包括連携協定に基づく連携・協力内容は下記の4点です。
- 半導体人材の育成教育に関する事項
- 先端半導体研究等の研究協力に関する事項
- 施設・設備の利用に関する事項
- その他、本協定の目的を達成するために必要と認めて合意した事項
今後、2nm半導体の評価・分析を行う拠点を2024年中を目処に北海道大学キャンパス内に設置するとしています。
半導体人材育成に関しては、ラピダスのエンジニアを北海道大学へ教員派遣して講義を行ったり、北海道大学の最新研究成果をラピダスのエンジニアが学ぶ機会の提供などを行っていく予定としています。
ルネサスがインド工科大学との連携を行うのに対して、ラピダスは工場建設をするお膝元である北海道大学との協定を締結しました。地の利を活かした取り組みということでしょうか。半導体人材が増加することを期待したいです。
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ラピダス:プレスリリース(6/5)
VISとNXP、シンガポールに300mm工場建設に向けた合弁会社を設立
台湾のVanguard International SemiconductorとオランダのNXPセミコンダクターズは6/5、シンガポールに300mm工場を建設する合弁会社であるVisionPower Semiconductor Manufacturing Company(VSMC)を共同で設立する計画を発表しました。
この工場では、自動車や産業、民生、モバイル向けをターゲットとした130nm~40nmプロセスを用いたミックスドシグナル、パワーマネジメント、アナログ製品を生産する予定です。その基礎となるプロセス技術は、TSMCからライセンス供与され、合弁会社に移管される予定としています。
合弁会社は必要な規制当局の承認を待ち、2024年後半に工場の初期段階の建設を開始し、2027年中に製品出荷の予定となっています。投資額は78億ドルと見込まれています。
VISはTSMC傘下のファウンドリで8インチ工場を複数持っています。今回は同社として初の300mm(12インチ)の工場建設となります。NXPとの合弁会社を設立しますが、工場運営自体はVISが担います。
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VIS:プレスリリース(6/5)
NXP:プレスリリース(6/5)
東京応化工業、熊本県の阿蘇くまもとサイトにおける新工場竣工式を実施
東京応化工業は6/6、高純度化学薬品の品質向上および供給能力拡大を目的として、熊本県菊池市に阿蘇工場 阿蘇くまもとサイトにおける新工場竣工式を実施したと発表しました。
同社は1984年に熊本県阿蘇市に阿蘇工場を開設し、高純度化学薬品の製造を行っています。近年の九州エリアにおける半導体生産の拡大を受けて2022年に熊本県菊池市に事業用地を取得し、同サイトを新設することを決定していました。
投資金額は約130億円、2025年上期からの稼働開始するとのことです。
東京応化工業はフォトリソグラフィ工程で使用されるレジストや現像液などを製造しています。九州ではTSMC熊本工場をはじめとする前工程の工場投資が続いていますので、東京応化工業の薬品薬液もこうしたところへの供給が進むことが想定されます。
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東京応化工業:プレスリリース(6/6)
信越化学、半導体パッケージ基板製造装置と新工法を開発
信越化学工業は6/12、半導体の後工程に使用するパッケージ基板を製造する新工法と、それに用いる装置を開発したと発表しました。
今回開発された装置は、半導体の前工程で用いられるデュアルダマシン工法を後工程用パッケージ基板製造に応用したものです。チップと基板を電気的に接続するインターポーザの機能を直接パッケージ基板に盛り込むことが可能な高性能なエキシマレーザ加工装置ということです。
インターポーザが不要ことに加えて、従来工法では実現できなかった微細加工も可能になるとしています。パッケージ基板製造におけるフォトレジストプロセスが不要となるため、コスト低減と設備投資の抑制にもつながるものです。
近年は後工程の重要度が高まっており、チップレット技術に注目が集まっています。今回開発された工法ではチップレットにおいてもインターポーザが不要となり、チップレットに使用するチップ間の接続も基板上で行えるということです。信越化学はSiウエハやフォトレジストで高シェアを持っており、デバイスメーカーとのつながりが深いため、各メーカーへ本技術の採用提案ができると想像されます。
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信越化学工業:プレスリリース(6/12)
旭化成、4インチAlN単結晶基板サンプルを24年下期から開始へ
旭化成は6/12、子会社のCrystal IS社が製造する4インチ窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板の使用可能面積が99%を超え、2024年度下期から国内外の半導体デバイスメーカーへのサンプル提供を開始すると発表しました。
ここでいう使用可能面積とは、現行のCrystal IS社のUV-C LEDの製造要件に基づく数値です。
AlNは非常に広いバンドギャップを持ち、SiCやGaNよりも電力損失が小さく、耐圧が高いポテンシャルを有することから、エネルギー効率に優れ、次世代のパワーデバイスへの適用や高周波向けのアプリケーションへの展開が期待されている材料です。
Crystal IS社は2023年8月にAlN基板の4インチ化に世界で初めて成功したことを発表していましたが、当時の基板の使用可能領域は80%以上でした。そこからこれまでに改善を重ね、今回99%以上のAlN基板を実現したということです。
AlN基板の改善が進み、サンプル提供が始まる模様です。AlNは材料としてのポテンシャルは高いのですが、デバイスの実用化についてはこれからですので、まだまだ時間がかかるでしょう。今後に期待をしたいものです。
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旭化成:プレスリリース(6/12)
ルネサス、Transphorm社の買収を完了
ルネサスエレクトロニクスは6/20、2024年1月に買収を公表していたTransphorm社の買収が完了したと発表しました。
買収額はおよそ3億3900万ドルで、Transphorm社の買収によって同社はGaN市場に参入します。
Transphorm社は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校と独自の技術基盤をもとに、2007年に米国カリフォルニア州ゴレタで創業されました。Transphorm社は、GaN半導体製品の幅広い高電圧電力変換アプリケーション向け品の設計・製造・販売を行っています。
同社は、Transphorm社の買収完了と同時に、新しいGaN製品と既存のプロセッサ、コネクティビティ、アナログ、パワーの各製品を組み合わせた15種類の新しいウィニング・コンビネーションを発表しました。その中には、EV用オンボードバッテリチャージャ(OBC)や3-in-1ユニットなどTransphorm社の車載グレードGaN技術の適用製品も含まれているとのことです。
ルネサスのパワー半導体事業はSi素子用に甲府工場に300mmラインを設置し、SiC素子用に高崎工場での生産ライン構築を進めており、ここにGaN素子が加わることで現在主流の材料を網羅した格好です。同社の攻勢に期待したいものです。
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ルネサスエレクトロニクス:プレスリリース(6/20)
北海道大学、国立陽明交通大学と半導体分野における研究協力体制確立へ
北海道大学は6/25、台湾の国立陽明交通大学と半導体ナノテクノロジー分野を中心に、緊密な研究協力体制を確立していく旨の合意文書を取り交わしたことを発表しました。
国立陽明交通大学は、先端半導体を中心とする電子、情報通信、経営、工学分野での研究をリードし、半導体産業を中心に台湾で多くの産学連携実績を生み出している大学とのことです。
具体的な研究として、シリコンフォトニクスなどの光電融合に関する研究を進めている国立陽明交通大学の研究者らと連携し、優れた先進半導体の結晶成長と光電融合デバイスの作製、シリコンフォトニクスへの応用などを共同で検討していくこととしており、半導体分野における国際共同研究の活性化が期待されるとしています。
北海道大学はラピダスとの提携もありましたが、台湾の大学間での研究開発体制も構築していくようです。色々と手を打っているようですね。
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北海道大学:プレスリリース(6/25)
横浜国立大学、半導体・量子集積エレクトロニクス研究センター開所式挙行
横浜国立大学は6/26、半導体・量子集積エレクトロニクス研究センターの開所式を6/19に挙行したことを発表しました。
同研究センターは、半導体・量子集積エレクトロニクスに関する学術の研究と新技術の社会実装を加速する研究拠点として、半導体「後工程」の研究力を強化し、日本の半導体産業のサステナビリティの確立に寄与することを目的として2024年4月に設置されています。
半導体ヘテロ集積ラボ、先端集積デバイスラボ、量子インターネットラボ、フォトニクスラボ、社会価値イノベーションラボの5つのラボから構成されており、主に三次元に積層するチップレットに代表される半導体後工程の技術開発が進められます。
横浜国立大学の研究センターは主に半導体後工程の研究力を強化するために設立されています。前工程の微細化、技術開発は進められていますが、後工程への注目度が増している証左と言えそうです。
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横浜国立大学:プレスリリース(6/26)