2024年11月に半導体業界で生じたニュースを11本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年11月号
2024年11月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年11月号
キオクシア、北上工場第2製造棟が竣工
キオクシアは11/5、岩手県北上市の北上工場第2製造棟(K2棟)、新管理棟の運用開始を前に安全祈願祭を実施したと発表しました。
11/11から新管理棟へ管理部門や技術部門等が順次、入居を開始し、2025年秋に予定されているK2棟の稼働に備える予定です。
日本経済新聞によりますと、2025年9月から最先端の第8世代のNAND型フラッシュメモリであるBiCS8を量産する見込みで、北上工場は量産に特化した工場で生産効率を上げてコスト競争力を高めるとしています。
キオクシアは生産調整やIPO延期などの苦しいニュースが多いですが、生産能力増強も進んでいます。北上工場にはまだスペースがあるようですので、今後の投資判断にも注目していきたいです。そしてIPOがいつ実現するのかも気になるところです。
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キオクシア:プレスリリース(11/5)
日本経済新聞:11/5掲載
LSTCとテンストレント、最先端デジタルSoC設計人材育成プログラムを開設へ
LSTC(技術研究組合 最先端半導体技術センター)は11/5、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/人材育成(委託)」において、「最先端デジタルSoC設計人材育成」についてテンストレントと共に採択されたと発表しました。
LSTCとテンストレントによってシリコンバレーの最先端企業での実践的なトレーニングも含む画期的な人材育成プログラムを開設するとしています。
具体的には以下の3つのコースからなる一貫した人材育成コースを設定し推進予定です。
- 上級コース:シングルナノ半導体の設計人材育成コース
- 中級コース:28ナノ以細のロジック半導体の設計人材育成コース
- 初級コース:基礎的な設計人材育成コース
LSTCがテンストレントと組んで設計人材育成に取り組みが進められます。国内に不足していると言われている先端半導体の設計人材を短期間に育成するためのプログラムのようです。より具体的な内容や募集は今後だと思われますが、羨ましい内容ですね。
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LSTC:プレスリリース(11/5)
経済産業省:発表情報(11/5)
SATAS、半導体後工程自動化に関する研究開発がNEDOに採択
SATAS(半導体後工程自動化・標準化技術研究組合)は11/6、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の公募に対し、「半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発」を提案し、委託先として採択されたと発表しました。
SATASは2024年4月に設立された研究組合で、米国Intelやオムロン、レゾナック、ダイフク、平田機工、村田機械、さらに産業技術総合研究所など22の企業と団体が参画しています。
今回採択された「半導体後工程自動化・標準化の開発・実証に関する研究開発」は、後工程の完全自動化に必要となる各装置間の業界標準となるインタフェース仕様を作成し、その仕様に従った装置の開発と実装ならびに単体試験を実施して、各装置を統合したパイロットラインでの結合試験や動作検証を経て、パイロットライン全体としてのエネルギー生産性改善に資する研究開発を行う予定です。
そのためにはパイロットラインの主要な構成要素である自動搬送・保管システム、キャリア、トレイ、パネル、ロードポートなどについて国内外の半導体メーカーやOSAT、装置メーカー、研究機関、標準化団体等が協力し、半導体製造の協調領域におけるトランスフォーメーションを促していく必要があるとしています。
内容
前工程の最先端プロセス品の製造を目指すラピダスがIBMと組んで研究開発を進めているのと同じように、SATASではインテルと日本企業連合群の日米連携によって後工程の自動化・標準化を進めようとしている模様です。前工程と比較して後工程には自動化の余地がまだまだ残されているようですので、成果を期待したいものです。
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半導体後工程自動化・標準化技術研究組合:プレスリリース(11/6)
経済産業省:発表情報(11/6)
三菱UFJ銀行とふくおかFG、半導体産業基盤強化に関する基本合意書締結
三菱UFJ銀行とふくおかフィナンシャルグループは11/7、九州地域における半導体産業基盤の強化に関する基本合意書を締結したと発表しました。
三菱UFJ銀行は2022年11月にラピダスに出資、2024年4月には半導体バリューチェーン推進室を立ち上げて半導体産業全体に貢献する体制強化を図っています。
また、ふくおかフィナンシャルグループも2023年10月に半導体ビジネスを強化する専門部署の立上げをして、資金支援や九州に進出する台湾企業のサポートなどを行ってきています。
今回の連携によって、双方が有するネットワークや機能を最大限に活用し、九州における半導体サプライチェーンの強靭化を図り、新生シリコンアイランド九州の実現に向けた取り組みを加速していくとしてます。
半導体産業はすそ野が広く、サプライチェーンが年々複雑化しています。地場と大手の金融機関が連携して、九州における半導体産業のサプライチェーン強化を図ってくれることを期待したいです。
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三菱UFJ銀行:プレスリリース(11/7)
ふくおかフィナンシャルグループ:プレスリリース(11/7)
三菱ケミカルグループの新菱、半導体精密洗浄事業を増強
三菱ケミカルグループの新菱は11/11、半導体精密洗浄事業の能力を拡大することを決定したと発表しました。
福島工場を新設し、既存の岩手工場を増強することで、半導体製造装置などのパーツ洗浄の能力を拡大するということです。両工場とも2026年10月から稼働予定となっています。
直近の半導体市場拡大に伴って、半導体製造装置などのパーツ洗浄も需要が拡大していることから、今回の能力拡大を決定したということです。
半導体工場の運営には製造装置のパーツ洗浄が欠かせません。自社内で行う場合と、新菱のような外部に委託する場合が考えられます。国内への工場投資が進んでいる中ですので、先を見越した増強を進めるのでしょう。
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三菱ケミカルグループ:プレスリリース(11/11)
三菱電機、パワー半導体モジュール組立の新工場を建設へ
三菱電機は11/20、パワーデバイス製作所 福岡地区にパワー半導体のモジュール組立・検査工程を担う新工場棟を建設すると発表しました。
およそ100億円を投じ、稼働開始は2026年10月の予定となっています。
新工場では、同敷地内にあるモジュール組立・検査工程の製造ラインの一部を集約し、部材受入から製造、出荷までの生産工程を効率化、進捗管理や自動搬送などを行う生産管理ツールを導入することにより、生産性の向上を図るとしています。
今回の件は2023年3月に公表されていた計画で、その内容が具現化されて発表されたという位置付けです。EV市場は直近でやや失速気味ですが、それでもパワー半導体は民生機器や産業用機器、再生可能エネルギー機器などで利用され、今後も市場拡大が予測されています。
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三菱電機:プレスリリース(11/20)
キオクシア、東証プライム市場への新規上場が承認
キオクシアは11/22、同社の株式が東京証券取引所プライム市場への新規上場が承認されたと発表しました。
上場予定日は12/18で、同日以降に株式の売買が可能になります。
想定される売出価格は1,390円となっており、公開価格は12/9に決定されます。上場時の時価総額はおよそ7,50憶円です。
キオクシアの株式上場は過去に何度も報道がされましたが、その度にメモリ市況悪化や新型コロナウイルス禍の影響などで延期してきました。今回はついに決定したということです。時価総額については過去には1兆から2兆円とも言われていましたが、7500憶円になったようです。今後の株価上昇による時価総額の拡大に期待したいものです。
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キオクシア:プレスリリース(11/22)
日本特殊陶業、東芝マテリアルを1500億円で買収へ
日本特殊陶業は11/25、東芝の子会社である東芝マテリアルの全株式を取得すると発表しました。
買収金額はおよそ1500億円、株式の譲渡実行日は2025年5月30日を予定しています。
同社は愛知県名古屋市に本社を置く企業で、自動車用のスパークプラグなどのセラミック製品を手掛けています。
東芝マテリアルは2003年に設立された東芝の100%子会社です。金属材料・部品、ファインセラミックス部品、化学材料などを手掛けており、半導体関連ではパワー半導体モジュールに使われる窒化ケイ素セラミックス基板やスパッタ用のターゲット材などを製造しています。
同社では東芝マテリアルが車載・半導体・医療・環境エネルギー分野などで長年培ってきた材料設計技術、プロセス技術及び製品応用技術などを活用することができるなど、さまざまなシナジーを実現できるとしています。
日本特殊陶業がセラミックスなどの素材に強みを持つ東芝マテリアルを買収して技術を取り込むようです。車両の電動化が進むとプラグの需要は先細りしますので、強みを活かした成長産業への投資と思われます。一方の東芝は資金を得るものの素材事業を手放してしまい、大丈夫なのかと勝手に心配になります。
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日本特殊陶業:プレスリリース(11/25)
JX金属、米国アリゾナ州の新工場開所式を実施
JX金属は11/25、米国アリゾナ州メサ市で進めていたスパッタターゲット用の新工場が完成し、開所式を実施したと発表しました。
同社の子会社であるJXUSAは、主要顧客である複数の半導体メーカーが相次いで拠点の新設・拡張を進めているアリゾナ州にて、顧客拠点の近くでスパッタターゲット加工やカスタマーサービスをこれまでも行ってきました。
新工場では生産能力を拡張、最新設備の導入によって生産性を向上させ、2025年初頭を目途に本格的な量産を開始する予定としています。
米国政府が補助金などによって国内に半導体工場を誘致した結果、こうした関連企業の投資も進んでいるようです。同工場には引き続き建屋の増築余力がまだあるということですので、今後も楽しみですね。
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JX金属:プレスリリース(11/25)
Amkor、国内初の研究開発拠点を福岡市に設立へ
Amkorは11/28、国内初の研究開発拠点となる「R&Dセンター」を2025年春、福岡市内に設立すると発表しました。
同社は半導体後工程の受託製造、いわゆるOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)で、世界シェア2位の企業です。
100%子会社であるAmkor Technology Japanは旧ジェイデバイスで、ルネサスエレクトロニクスや東芝、富士通の後工程拠点を吸収、統合しており、国内シェアトップとなっています。
今回発表されたR&Dセンターでは半導体先端パッケージング技術の研究開発や先端半導体プロセスの研究及び量産に貢献可能な技術開発、また材料に関する基礎開発及び新規材料用設備の検討を行うとしています。
同社は九州に複数の製造拠点を持っており、ハブとして立地がよい場所に設けるようです。熊本県のTSMCはもちろんのこと、九州における半導体関連投資は相変わらず活況ですね。
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福岡県:プレスリリース(11/28)
デンソーと富士電機、SiCパワー半導体で協業し2100億円投資へ
デンソーと富士電機は11/29、協業してSiCパワー半導体に関する投資および製造連携を行い、供給基盤を整備・強化すると発表しました。
両社で2116億円を投資する計画で、この計画が経済産業省による「半導体の供給確保計画」に認定され、投資額の1/3にあたる最大705億円が助成される見込みです。
この計画ではデンソーがSiC基板を製造し、両社でエピタキシャルウエハを製造、SiCパワー半導体を富士電機が製造するとしています。供給開始は2027年5月となっており、8インチ換算で年間31万枚の計画です。
両社は、この連携を通じて国内の半導体安定供給体制の構築に貢献し、半導体業界および自動車業界の国際的な競争力向上に寄与と脱炭素社会の実現を目指すとしています。
SiCパワー半導体の製造はロームが先行しており、ロームの製造計画は昨年経産省に認定されております。足元ではEV化がやや鈍化していますが、将来的には車両の電動化は避けて通れないと考えられます。そこに向けて両者で協業していくものと思われます。
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デンソー:プレスリリース(11/29)
富士電機:プレスリリース(11/29)