2024年12月に半導体業界で生じたニュースを9本厳選してご紹介します。
動画で説明:半導体業界ニュース2024年12月号
2024年12月末時点の半導体関連株式市場推移
各ニュース記事:半導体業界ニュース2024年12月号
インテル、ゲルシンガーCEOの退任を発表
インテルは12/2、同社の最高経営責任者(CEO)であるパット・ゲルシンガー氏が同社を退職し、12/1付で取締役を退任すると発表しました。
同社では業績不振が続いており、事実上の解任とみられています。
今後、取締役会が新たなCEOを選定する間、暫定共同CEOとしてデビッド・ジンスナー氏とミシェル ジョンストン・ホルトハウス氏が任命されています。
取締役会は選考委員会を設置し、ゲルシンガー氏の後任を探すことに迅速に取り組む予定としています。
驚きのニュースです。インテルの苦境は周知の通りですが、それを立て直すべくさまざまな施策を打っていたゲルシンガー氏が事実上の解任をされてしまいました。引責と言えばそれまでですが、果たして後任が他の方に務まるのか、そもそも火中の栗を拾うような方がいるのか、ある意味で注目は続きますね。
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インテル:プレスリリース(12/2)
富士フイルム、熊本拠点に20億円投じてCMPスラリー生産能力強化
富士フイルムは12/5、半導体材料事業を拡大するために熊本県菊陽町に立地する生産拠点でCMPスラリーの生産設備を増強すると発表しました。
今回の投資は、AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に対応するためのものとしています。
同社の半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズの熊本拠点におよそ20億円を投じて、銅配線用を含めたCMPスラリー生産設備を増強。これによって同拠点のCMPスラリーの生産能力を約3割拡大するということです。稼働は2025年1月からとしています。
AI向け半導体の需要拡大に伴うアジアでの需要増に対応するということで、今回は生産設備の増強を図るようです。そのため稼働は来年早々となっており、計画的な生産能力拡大と思われます。現在の先端品では配線がどんどん高層化していますので、そこに利用されるCMPスラリーも増えていると考えられます。
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富士フイルム:プレスリリース(12/5)
住友ベークライト、東北大学に共創研究所を設置
住友ベークライトは12/9、東北大学の学内に2025年から「住友ベークライト×東北大学 次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」を設置すると発表しました。
研究の背景として、次世代パワー半導体やパワーモジュール、AI等のデータ処理系半導体デバイスでは、高速通信、熱マネージメント、エネルギー効率の改善による省エネなど、これまで以上に高機能な材料が要求されると考えられているためです。
そのため、より高機能を実現できる素材・プロセス・評価技術を開発するため、東北大学構内に研究所を設立して、知識・技術の修得、東北大学所有の先進的な設備・機器を活用し、さらに今回の活動を通じて人材育成に取り組むとしています。
設置期間は2025年1月から2028年3月末までとなっています。今回の研究所設置は、東北大学の「共創研究所」制度を活用することで東北大学と共に新たな価値を創造し、社会の発展に貢献するとしています。
住友ベークライトが東北大学と共同で研究所を設置するようです。大学と共に行うことで、いわゆる知の探究と深化をより進められるのかなと勝手に思っています。時限的な設置ではありますが期待したいものです。
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住友ベークライト:プレスリリース(12/9)
ローム、TSMCと車載GaNに関する戦略的パートナーシップを締結
ロームは12/10、TSMCと車載GaNパワーデバイスの開発と量産に関する戦略的パートナーシップを結んだと発表しました。
今回のパートナーシップによって、ロームのGaNデバイス開発技術と、TSMCの業界最先端のGaN-on-Siliconプロセス技術を組み合わせることによって、高電圧・高周波特性の優れたパワーデバイスに対する需要の高まりに応えることを目指すとしています。
GaNパワーデバイスは、その材料特性上、低オン抵抗と高速スイッチング性能に優れています。現在はACアダプタやサーバ電源などの民生品や産業機器で使用されています。
TSMCでは今後EV用のオンボードチャージャーやインバータなどの車載用途における将来的な環境効果を見込んでおり、ロームはTSMCと組んで車載分野でのGaN普及を促進するとしています。
車載分野でのパワー半導体はSiCが先行していますが、ロームはGaNにも注力していくようです。材料によって得手不得手がありますので、パワー半導体に多角的に取り組んでいくようです。
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ローム:プレスリリース(12/10)
TOPPAN、次世代半導体パッケージのコンソーシアムのUS-JOINTに参画
TOPPANは12/10、大手半導体材料メーカーであるレゾナックが主導し2024年7月に設立された次世代半導体パッケージ分野の日米混合のコンソーシアム「US-JOINT」に、2024年11月からパッケージ基板メーカーとして参画したと発表しました。
近年、需要が急速に拡大している生成AIや自動運転向けなどの半導体において、パッケージ構造が2.5次元や3次元と呼ばれる複雑なものとなっています。それに伴い、使用される材料の種類も増加の一途をたどっています。
レゾナックが主導するUS-JOINTは、米国シリコンバレーを拠点とし、日米の材料・装置メーカー10社が参画するパッケージング技術開発のプラットフォームです。
同社では、US-JOINTに参画することで、強みであるハイエンドのパッケージ基板の技術開発力を活かし、半導体パッケージ基板事業の強化を目指すとしています。
TOPPANがUS-JOINTに参画することが公表されました。複雑化する半導体パッケージの技術開発を自社のみで進めるよりも、こうしたプラットフォームに入って顧客ニーズをリアルタイムにキャッチすることが狙いとされています。成果に期待したいものです。
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TOPPAN:プレスリリース(12/10)
ラピダス、EDA大手のシノプシス、ケイデンスと協業へ
ラピダスは12/11、設計期間の短縮に向けてシノプシスと、設計ソリューションでケイデンスとそれぞれ協業することを発表しました。
シノプシスとは設計期間の短縮のためにプロセス感度やばらつきの新しいモデル化を行い、プロセスの更新とPDK更新に合わせたロジックやメモリのタイミングモデル作成に必要とされる期間を従来の2,3カ月から数日へと大幅短縮するとしています。
そして2nmのGAA製造プロセスと裏面電極技術の設計、製造に対応したケイデンスの設計ソリューションとIPポートフォリオを顧客に提供するとしています。
シノプシスとケイデンスは半導体の設計に不可欠なEDAと呼ばれる設計ツールの大手企業です。
ラピダスがEDA大手の2社と協業することを発表しました。ラピダスでは製造だけではなく設計支援と迅速化も謳っており、そこに対して前進するとみられています。今後も引き続き注目していきたいです。
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ラピダス:プレスリリース(12/11、シノプシス)
ラピダス:プレスリリース(12/11、ケイデンス)
DNP、EUV向けフォトマスクで2nm世代以降のパターン解像達成
大日本印刷は12/12、半導体製造の最先端プロセスのEUVリソグラフィに対応した、2nm世代以降のロジック半導体向けフォトマスクに要求される微細なパターンの解像に成功したと発表しました。
また同社では、2nm世代以降の次世代半導体向けに適用が検討されている高開口数(高NA)に対応したフォトマスクの基礎評価が完了し、半導体開発コンソーシアムや製造装置メーカー、材料メーカー等へ評価用フォトマスクの提供を開始したとしています。
高NAはEUV露光装置のレンズ開口数を従来の0.33から0.55に拡大したものです。高NA-EUVリソグラフィでは、従来と比較してより高い解像度の微細なパターンをシリコンウエハ上に形成することができ、より高性能で低消費電力の半導体を実現することが期待されています。
同社では、今後製造における歩留り向上などの生産技術の確立を進めて2027年度の供給開始を目指すとしています。
2nm世代の製造が近づいてきているようです。プロセスの世代は今や実測の長さを表すわけではありませんが、それでも進化が続いています。DNPでは今後1nm世代も見据えたフォトマスク製造技術開発を進めていくようです。期待したいものです。
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大日本印刷:プレスリリース(12/12)
セミコンジャパン開催、10万人を超える来場者で賑わう
半導体関連サプライチェーンの展示会であるセミコンジャパン2024が12/11から12/13の3日間、東京ビッグサイトで開催されました。
今年のテーマは、「半導体の未来がここにある」というもので、同時に半導体パッケージング、基板実装分野のサミットであるAPCS(Advanced Packaging and Chiplet Summit)、設計と検証分野のサミットであるADIS(Advanced Design Innovation Summit)も行われました。
開催にあたり、石破総理からビデオメッセージで政府としても半導体投資を全力でサポートする旨が伝えられました。延べ来場者は前年を大きく上回り10万人を超えています。
個人的には今年は残念ながら行けませんでしたが、聞くところによると非常に活況で人が多かったようです。実際に来場者数にも表れています。半導体への注目度が高まることはうれしい限りですね。
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SEMI JAPAN:セミコンジャパン開催速報
ラピダス、日本初の量産対応EUV露光装置の設置作業を開始
ラピダスは12/18、北海道千歳市で建設中の工場IIM-1に、オランダASML製のEUV露光装置を搬入し、設置作業を開始したと発表しました。
これを記念して同日に新千歳空港ポルトムホールにて記念式典が執り行われました。
同社によりますと、最先端半導体の量産に対応したEUV露光装置の導入は、日本初ということです。
今後、2nm世代半導体を実現するための多くの半導体製造装置および搬送システムが導入され、2025年4月からパイロットライン稼働開始予定となっています。
とうとうEUV露光装置の搬入、設置が開始されました。パイロットライン稼働開始に向けて今後はその他の設備も含めて急ピッチで設備の搬入と立上げが進む模様です。きっと工場内は大変な作業になっていると思いますが、頑張っていただきたいものです。
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ラピダス:プレスリリース(12/18)