半導体業界と一口に言っても、生産される地域は世界中ですし、流通している製品は多種多様です。
地域と製品を分類するひとつの指標として、WSTS(世界半導体市場統計)が定義する分類があります。
この記事では、スタンダードな分類であるWSTSのデータを見て、半導体市場を概観してみます。
ぜひとも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
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- 半導体業界に興味関心がある
- 半導体業界に就職したい学生さん
- 半導体業界に転職したい社会人
半導体市場について動画で解説
世界の半導体市場:地域別
まずは世界の半導体市場を概観してみましょう。
地域を日本、米国、欧州、アジア・太平洋に分けた2000年以降の推移が上図です。
市場規模としては2000年と比較して2022年(予測)は約3倍になっています。年平均成長率にしますと、5.03%です。
この数字は世界のGDP成長率がおよそ2,3%程度に対して非常に高い数字です。
この中でもアジア・太平洋地域の伸びが著しいです。2000年には市場シェアが25.1%でしたが、2022年(予測)には何と61.9%となっています。
相対的に日本の世界市場における存在感は低下傾向です。2000年は市場シェアが22.9%でしたが、2022年(予測)では7.9%にまで下がっています。
日本の半導体市場推移
世界の半導体市場から日本を抜き出したのが上図です。
2000年と比較して2022年(予測)はほとんど変わらずに横ばいです。年平均成長率に換算しますとわずか0.08%となってしまいます。
しかもこの間、ITバブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災などがあり、その度に生産金額は減少し、ここ数年でようやく回復してきたと言えます。
これだけを見ますと、日本の半導体市場には夢も希望もなさそうに見えてしまいます。
確かにメモリやロジック製品では世界の後塵を拝していますが、センサやパワー素子など特定の分野では強い起業が存在するのも事実です。
とは言え、市場規模という意味では日本は成長できていないという現実は受けいれる必要がありそうです。
米国の半導体市場推移
世界の半導体市場から米国を抜き出したのが上図です。
2000年と比較して2022年(予測)は市場規模が約2倍となっています。年平均成長率に換算しますと3.31%です。
2001年にはITバブル崩壊で前年と比較して半分程度に落ち込んでいますが、徐々に回復し、2017年以降は顕著な伸びを示しています。
欧州の半導体市場推移
世界の半導体市場から欧州を抜き出したのが上図です。
日本と似ていて2000年と比較して2022年(予測)はほとんど変わらずに横ばいです。年平均成長率に換算しますと0.80%です。
ITバブル崩壊後とリーマンショック後は落ち込みが大きく、ここ数年でようやく回復してきたと言えます。
アジア・太平洋の半導体市場推移
世界の半導体市場からアジア・太平洋を抜き出したのが上図です。
2000年と比較して2022年(予測)は市場規模がなんと約7倍となっています。年平均成長率に換算しますと9.43%となり、驚異的な成長率と言えます。
他の地域が大きく落ち込んでいるITバブル崩壊後やリーマンショック後の減少も小さく、基本的には一貫して成長している市場です。アジア・太平洋と一括りになっていますが、台湾と韓国が牽引している市場です。
世界の半導体市場:製品別
次に世界の半導体市場を製品別で概観してみましょう。
製品は大きくICと非ICに分類され、2000年以降の推移が上図です。
一貫してIC(ロジック、マイクロ、メモリ、アナログ)が市場の8割以上を占めて推移しています。
しかし近年では非IC(ディスクリート、センサ、オプト)が増加傾向となっています。
IC製品別の世界半導体市場推移
IC製品は大きく4つに分類されます。
- アナログ
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製品例:増幅器、AD/DAコンバータ、電源ICなど
年平均成長率:4.27%
- メモリ
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製品例:DRAM、NANDフラッシュなど
年平均成長率:5.84%
- マイクロ
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製品例:マイクロプロセッサ、マイコンなど
年平均成長率:1.42%
- ロジック
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製品例:FPGA、GPU、DSPなど
年平均成長率:7.43%
全体の中ではロジックとメモリの成長率が高い傾向にあります。
非IC製品別の世界半導体市場推移
非IC製品は大きく3つに分類されます。
- オプト
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製品例:LED、レーザーなど
年平均成長率:7.28%
- センサ
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製品例:圧力センサ、ジャイロセンサなど
年平均成長率:16.54%
- ディスクリート
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製品例:パワーMOS、IGBTなど
年平均成長率:2.98%
全体の中ではセンサの成長率が著しく高い傾向にあります。