パソコンやスマホ、家電に自動車といった私たちの身の回りの便利なものには必ず半導体が使われています。
多少の上下はありますが、半導体需要は年々高まり市場は拡大し続けています。
この記事ではそんな半導体の世界市場について、WSTSという世界の半導体市場に関する統計機関が発表している2023年秋季版の結果を解説します。是非とも最後までご覧ください。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界の今後を知りたい
- 半導体関連企業の株を買いたい
動画で解説:2023年秋季版 世界の半導体市場
WSTSとは半導体に関する世界的な統計機関
まず統計値を公表しているWSTSについて確認しましょう。
WSTSとは、WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICSの略称で、世界の半導体メーカが自主的に加盟している半導体市場に関する世界的な統計機関のことです。加盟している半導体メーカーは2023年現在で43社となっています。
市場統計予測値は原則年2回公表しています。例年春季版を6月頃、秋季版を11月頃となっています。
地域別半導体市場の推移
次に地域別の半導体市場の推移を確認していきます。
世界の半導体市場
世界全体としては、2023年が前年比-9.4%となっており、2019年以来4年ぶりのマイナス成長予測です。ただし春季予測よりはマイナス幅が縮小しています。この要因のひとつは生成AIの急拡大によってロジックを中心に市場が回復傾向にあるためです。
2024年は前年比+13.1%と市場は再び成長することが予測されています。このプラス幅も春季予測よりも拡大しています。
地域別の構成比率は、2023年予測値で日本9.1%、米国25.5%、EMEA(欧州・中東・アフリカ)11.0%、アジア・太平洋54.5%となっています。
日本としては全体の1割を切っている状況で、アジア・太平洋が過半を占めている格好です。
日本の半導体市場
日本の半導体市場について確認しましょう。
日本市場はドルベースでは2023年前年比-2.0%とマイナス成長です。2024年は前年比+4.4%とプラス成長予測となっています。
一方、円安の影響もあり円ベースでは2023年は+4.2%、2024年は+8.0%の予測です。この要因は主として自動車向け用途を中心にマイクロ、アナログ、ディスクリートが安定成長しているためです。
米国の半導体市場
米国の半導体市場について確認しましょう。
米国市場は2023年前年比-6.1%と2019年以来4年ぶりのマイナス成長です。しかし2024年は前年比+22.3%となり過去最高を更新するという予測となっています。
EMEA(欧州・中東・アフリカ)の半導体市場
EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の半導体市場について確認しましょう。
EMEA市場は2023年前年比+5.9%とプラス成長です。さらに2024年は前年比+4.3%となり市場は過去最高を更新予測となっています。他の地域と比較して安定的な成長を続けている形です。
アジア・太平洋の半導体市場
アジア・太平洋地域の半導体市場について確認しましょう。
アジア・太平洋市場は2023年が前年比-14.4%となっており、2022年に続き2年連続でマイナス成長予測となっています。メモリを中心とした需要の減少が大きく影響している格好です。2024年は+12.0%とプラス成長予測となってはおりますが、2021年や2022年には及ばない状況です。
製品別半導体市場の推移
ここでは製品別の半導体市場の推移を確認していきます。
IC製品は2023年は前年比-11.0%となり、2024年が前年比+15.5%となる予測です。2024年に2022年と同程度に戻る見込みです。
非IC製品は2023年が前年比-1.7%、そして2024年が前年比+3.0%の予測となっています。
さらにIC、非IC製品の内訳をもう少し見ていきましょう。
IC製品別推移
IC製品は主としてロジック、マイクロ、メモリ、アナログの4種類に分類されます。
2023年は全般的にマイナス成長予測ですが、その中でもメモリは-31.0%と大幅なマイナス予測となっています。メモリメーカーにとっては非常に厳しい年になりました。
2024年は全般的にプラス成長に回復する見込みで、メモリは+44.8%と前年と打って変わって大幅なプラス成長予測です。変動の幅が非常に高いと言えます。
非IC製品別推移
非IC製品は主としてディスクリート、センサ、オプトの3種類に分類されます。
2023年はディスクリートのみがプラス成長予測、センサとオプトマイナス成長予測です。ディスクリートは特に省エネ、高効率化に必須なパワー関連が年間を通じて安定的な成長見込みです。
2024年は全般的にプラス成長予測となっています。ICほどは変動幅が小さいことが特徴です。
製品別まとめ
最後に製品別のまとめです。
これまで見てきた通り、メモリ製品は前年比のマイナス、プラスの変動幅が非常に大きいです。これはメモリメーカーは収益は安定しにくい証左です。儲かるときは非常に儲かりますが、厳しい年は2023年のように落ち込み方が大きくなります。経営者側は悩ましいところでしょうね。
2022年から2023年にかけてはディスクリートとオプト以外はマイナス成長予測です。一方で2024年は全般的にプラス成長予測です。
2023年は厳しい年になりましたが、2024年からさらに将来的に半導体の需要はまだまだ拡大することが長期的に予測されています。今後の成長に期待していきたいものです。