日立ハイテクは、日本の半導体製造装置メーカーで主に半導体プロセスで使う計測・検査装置の大手企業です。
社名の通り日立製作所のグループ企業で、現在では100%子会社となっています。この記事では、そんな日立ハイテクについて歴史や強み、業績、年収について徹底解説します。
【プロフィール】
- 上場企業の現役半導体プロセスエンジニア
(経験10年以上) - 多くの材料メーカーや生産委託先企業との業務経験あり
- 著書を出版しました
- 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ
- 半導体業界に興味がある
- 半導体業界に就職、転職したい
- 特に日立ハイテクについて調べたい
動画で解説:日立ハイテクについて
日立ハイテクは日立製作所のグループ企業
日立ハイテクは本社が東京都港区虎ノ門あります。虎ノ門ビジネスヒルズ内に本社が置かれており、都心の一等地というイメージです。
設立は1947年で、2001年にエレクトロニクス専門商社である日製産業と日立製作所の計測器グループと半導体製造装置グループが統合して誕生しました。
元々は上場していましたが、2020年には日立製作所の100%子会社となり、現在は非上場企業となっています。
ただし売上高6700億円、従業員数は連結で1万5千人を超える大企業です。
日立ハイテクの歴史
日立ハイテクは、前身となる会社が1947年4月に日之出商会として設立され、その年の10月に日製産業へ社名を変更しています。
現在の主力製品のひとつである測長SEMが開発されたのは1984年です。
そして2001年に日製産業と日立製作所の計測器グループと半導体製造装置グループが統合して日立ハイテクノロジーズとなりました。
その後子会社である日立ハイテクインスツルメンツがルネサス東日本セミコンダクタの半導体製造装置事業を統合するなどを経て、2020年2月に社名を現在の日立ハイテクへと変更しています。
2020年4月には日立製作所のTOBが成立して100%子会社となったため、上場廃止され現在に至ってます。
日立ハイテクの位置付け
次に半導体製造装置メーカーにおける日立ハイテクの位置づけを確認してみましょう。
上図は2023年の世界の半導体製造装置メーカー売上高ランキングです。日立ハイテクは12位に位置しており、国内では東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENに次いで4位となっています。
国内企業が強みを発揮している装置分野で一定の存在感を持っています。
日立製作所における子会社・事業の再編
日立ハイテクの親会社である日立製作所は、2009年3月期に当時の国内製造業で過去最大となる7873億円の赤字に陥りました。
そのための立て直しとして多くの事業再編を進め、「ルマーダ」と呼ばれるデジタル技術を活用したソリューション提供型ビジネスに重心を移してきました。その過程の中で本業との親和性が低い子会社や事業は統合や売却などの再編が進められてきました。
例えば2016年には日立キャピタルが、2017年には日立工機と日立国際電気が売却されました。日立国際電気は、その中の拡散炉などの半導体製造装置部門が独立して現在のKOKUSAI ELECTRICとなっています。
そして2020年には日立化成を当時の昭和電工へ売却して、現在のレゾナックとなっています。
この年に日立ハイテクを完全子会社化しています。さらに2022年には日立金属、日立建機、日立物流も売却されています。
その一方でスイスABBの送配電事業や米国グローバルロジック、仏国タレスの鉄道信号事業を買収するなどの施策を打っています。こうした事業の取捨選択は市場から評価され、業績も向上しています。
日立ハイテクの事業内容
日立ハイテクのコア技術は「見る・測る・分析する」の3つです。このコア技術を応用して、
- ヘルスケアソリューション
- ナノテクノロジーソリューション
- バリューチェーンソリューション
- コアテクノロジーソリューション
の4つの事業を展開しています。
半導体製造装置関連ではナノテクノロジーソリューションの中でエッチングや計測、検査装置を手掛けています。またコアテクノロジーソリューションの中で電子顕微鏡や蛍光X線膜厚計なども手掛けています。
半導体プロセスにおける位置付け
ここで半導体プロセスにおける位置付けを確認しましょう。
半導体を作る工程は、大きく分けて
- ウエハを製造する工程
- 前工程
- 後工程
に分けられます。
この中で前工程でフォトリソグラフィによって回路パターンを転写したウエハの不要部分を削って除去するエッチング工程や、成膜した薄膜の厚さやパターンニングした幅などが狙い通りにできているかを測長する工程、ウエハ上の異物・欠陥有無を検出する工程に日立ハイテクの装置が利用されています。
エッチング工程とは
エッチング工程についてもう少し詳しく見てます。
エッチング工程は薬品やイオンの化学反応を利用して、シリコン基板や各材料薄膜に加工を施す工程です。
フォトリソグラフィの現像工程でレジストが溶けた部分の下の層を加工します。エッチング方法は大きくドライエッチングとウェットエッチングに二分されますが、日立ハイテクが取り扱うのは加工精度が高いドライエッチング装置です。
計測・検査工程とは
計測・検査工程についてももう少し詳しく見てみましょう。
計測とは機器などを用いて数量などを計ることです。
半導体ではパターニングする際のレジストマスクの幅やエッチングをしてレジストを除去した後の薄膜の幅を測定します。所望の幅にできていない場合は不良品となってしまう可能性があるため、加工の途中での測定は大量に行われます。
またここで言う検査とはウエハ上の異物やパターン欠陥を検出することです。
半導体では大きくパターン付きウエハ検査とパターンなしウエハ検査に分けられます。
パターン付きウエハ検査では製品ウエハ上にランダムに発生する異物有無を検出します。異物があるとそのチップは不良になる可能性があるため、こちらも工程内の必要箇所で検査が行われます。
パターンなしウエハ検査は、ウエハメーカーの出荷検査やデバイスメーカーの受入検査、ダミーウエハと呼ばれる製造装置の状態チェックなどに使われます。
日立ハイテクの強み
日立ハイテクの強みは特に回路線幅のパターン測定を行う測長SEMです。
1984年の開発以降、世界市場にておよそ7割という圧倒的なシェアを確保しています。装置の累計出荷台数は6,000台ということで、デバイスメーカーから信頼されている証と言えそうです。
日立ハイテクの業績
日立ハイテクの業績は2023年は全体として売上高が6,704億円となっています。
セグメント別売上高を見ますと、ナノテクノロジーソリューションが2,503億円となっており、4割近い売上がナノテクノロジーソリューション領域という形です。
売上高の推移は安定しており、受取利息および支払い利息調整後税引前当期利益であるEBITマージンも10%前後で安定した推移となっています。
日立ハイテクの製造拠点
日立ハイテクの製造拠点は大きく2か所です。
メイン拠点は日立製作所の関連会社ですから、やはり茨城県内です。茨城県ひたちなか市にある那珂工場で計測・検査装置を製造しており、同市内のマリンサイト拠点では設計や開発が行われます。
また山口県下松市ではエッチング装置の製造が行われています。ここは製造能力増強のために新棟が建設されており、2025年から生産開始予定となっています。
日立ハイテクの年収
最後に日立ハイテクの年収を確認しましょう。多くの方が気になるところですね。
上場廃止となる前の2019年に提出されている日立ハイテクの有価証券報告書ですので少し古いデータになりますが、それによりますと、従業員数約4,000名の平均年収として約834万円となっています。
新卒採用の初任給は他の大手企業と変わらないレベルです。
日立ハイテクまとめ
- 公式サイト